生活空間のフロアが違うという冒険感
各客室は、連なってはいるものの、戸別仕様。鍵を開けると坪庭的前庭があり、最初にあるのがリビングルームだ。この客室、間口は狭いが奥へと広がる京都の町屋を縦にしたとイメージすると分かりやすいかも。ルーフテラスと中2階のある3階建ての部屋なのだ。
1階がリビング、中2階が大型TVやコーヒーマシン、ミニバーなどのあるティールーム。2階が寝室とウォーキングクローゼットで3階がバスルームとなる。初日は、忘れ物をしたりで、階段を上がったり下りたりのエクササイズ要らずだったが、人間、慣れるというのは素晴らしい。フロアが分割されているのが、なかなか楽しくなってくる。
もっとも、かつては各フロアに3、4家族が暮らしていたとか、いまよりも天井の高さは低かったなどと、想像を超える劣悪な環境で使われていた建物なのだが……いまでは、信じられないほどモダンで快適にしつらえてある。
ホテルの客室は、何泊かするとマイホームのような居心地がしてくる。でも「上海カペラ」のこの珍しいつくりは、“毎日が探検”的な新鮮さを失わない。もちろん階段を上がったり下りたりと、ときには“チッ”と思いもするのだが……。フロアごとの個別感が独特で、これを楽しまなきゃここに泊まる意味がないと思った。
右:毎晩セットされる、プティフール4種。これ、ガニェールのスイーツですからね! なんとも贅沢。
2018.05.15(火)
文・撮影=大沢さつき