世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、交替で登板します。

 第162回は、芹澤和美さんが伊豆半島の付け根を周遊し、気ままなショートトリップを楽しみます!

ローカル線「いずっぱこ」で
伊豆の温泉街へ

思い立って出かけた週末の旅。普通列車でのんびりと、水の都、三島へ。

 梅雨の晴れ間、ぶらりとどこかに行きたくなって、1泊2日の旅に出た。飛行機のチケットを手配して遠い街へ行くのではなく、もっと気軽で、ホテルを予約するだけの、行き当たりばったりの旅だ。昼過ぎにのんびりと自宅を出て向かったのは、静岡県三島市。

地元では誰もが「いずっぱこ」と呼ぶローカル線、伊豆箱根鉄道駿豆線で伊豆の温泉郷へ。

 東京から三島まで新幹線なら1時間弱、普通列車を利用しても2時間強。遠方への旅と違って、近場の旅は移動時間をそれほど気にしないですむから、気が楽だ。急ぐ必要はなし。あえて新幹線を使わず、普通列車のグリーン席でゆったりと、海を眺めながら向かうことにした。

 三島駅から向かったのは、中伊豆の温泉。ローカル線の伊豆箱根鉄道駿豆線、通称「いずっぱこ」に乗り換えて、わずか約20分で伊豆長岡の温泉郷に着く。

 沿線の湯処といえば修善寺が有名だが、伊豆長岡は地元の人たちに親しまれる、よりカジュアルな温泉街。日帰り入浴できる温泉宿も多くて、ぶらりと立ち寄るにはぴったりの場所なのだ。

左:伊豆長岡温泉郷。かしこまったところがない、ローカルな雰囲気もいい。
右:伊豆長岡温泉のなかでも、歴史の長い古奈温泉。飲泉も身体にいいのだそう。

 なかでも、源氏山を挟んで東側にある古奈温泉は、開湯を約1300年前にさかのぼるとされる歴史ある温泉地。源頼朝が伊豆の蛭ヶ小島に幽閉されていた際も足繁く通っていたというから、効能も期待できそう。

幕末の最新設備、「韮山反射炉」を造ったのは、幕府のお代官、江川太郎左衛門。

 期待どおり、湯上がりは疲れもとれてスッキリ。リフレッシュもできたので、隣町にある世界遺産、「韮山反射炉」へと足を延ばすことにした。

 反射炉というのは、反射により一点に熱を集中させ金属を溶かす溶解炉のこと。幕末はこの炉で大砲が造られていた。ペリー来航など、欧米諸国の船が日本にやって来るなか、「日本も軍事力を強化しなくては!」という幕府のお達しで造られたもので、当時の最先端の技術が集結する設備だったという。

2017.07.25(火)
文・撮影=芹澤和美