美味しさのバリエーションを知って
コーヒーをもっと楽しく
セミナーがスタートする13時に近づくにつれ、神乃珈琲の2階にあるラボには続々と受講生たちが集ってくる。この日のテーマは、「私の珈琲の創り方」。全3回制のセミナー「おいしい珈琲の淹れ方 其の弐」の後編として、よりオリジナリティ溢れる味わいを極めていく。
前回、初めて本格的にハンドドリップの手法を学んでから、道具を揃えて家で練習を重ねてきたという女性は、「毎日、同じ豆を使ってコーヒーを淹れているのに、日によって味わいが違うんです。そういう細かい味の変化がわかるようになったのは、自分の中で嬉しい発見でした」と笑顔を見せる。
今日は、どのような気づきがあるのだろうか。持参したエプロンを身につけ、いよいよレッスンがスタート!
素材について学習し、理解を深めることで、より美味しさを楽しむことができると考えている菅野さん。まずは、現在のサードウェーブに至るまでのコーヒー市場の動きや、豆の品質の違いなどを、自身の思いや体験談などを織り交ぜながら熱く解説していく。
神乃珈琲で働くスタッフが、研修で学ぶのと同じ内容を扱う本格的なプログラムの中でも、菅野さんがとくに力を入れているのが「右脳」を使う体感型の演習だ。
「同じ品種の生豆でも、焙煎度合によってコーヒーの風味に大きな違いが生まれます。ここからは、右脳をフル活用して、実際に香りと味わいを確かめながら、美味しさの豊かなバリエーションを体感してみましょう」
スメリングとテイスティングを繰り返しながら、例えばハイローストのコーヒーからは「ミルクチョコレート」「ナッツ」「炭」など、それぞれが感じとった風味を自由に口に出して伝え合う。自らの味覚の新境地を切り開く、なんとも興味深い体験だ。
しばらくすると、先ほどから何やら時計を気にしていた菅野さんが、「もうすぐ豆が焼き上がる時間です。下へ降りて、焙煎機の側に行ってみましょう!」と受講生に呼びかける。
こうしたサプライズも、焙煎所を併設している同店ならでは。大型焙煎機の目の前に立ち、焼きあがった豆が一気に流れ出てくる迫力のある瞬間を見学した後には、できたての豆で淹れたコーヒーを試飲するという贅沢な機会も。
「雑味が一切なく、とても飲みやすいですね。こんなにフレッシュな味わいのコーヒーを飲んだのは初めてです!」(受講生)
2017.04.15(土)
文=中山理佐
撮影=佐藤 亘