音楽評論家/音楽プロデューサーの冨田明宏さんが、2010年代のベストアニメ音楽について教えてくれました。
» 第1回 アニメの枠を超える劇伴
» 第2回 音楽アーティストの本気アニソン
» 第3回 新世代アニソンポップ&ロック
» 第5回 キャラクターの個性で魅力倍増
起承転結のある
メロディアスなダンスナンバー
アニソンとダンスミュージックの関係は意外にも古く、80年代からシンセサイザーやシーケンサーの一般化とともに導入されていた。必ずしも踊ることを目的としない、起承転結のあるメロディアスなダンスナンバーはアニソンならでは。
◆ Lia
「My Soul, Your Beats!」
鼓膜を震わせるピアノの旋律、舞うようなストリングス。あまりに美しく、スリリングなメロディ。そして性急な鼓動のように刻まれるビート。アニソンを掘り下げれば誰もが辿り着き、その神曲っぷりに今も熱烈な支持を集め続けている「鳥の詩」(2000年/『AIR』主題歌)。その歌い手であるLiaが、2010年に放った極上アンセム。
Lia「My Soul, Your Beats!」
『Angel Beats!』OPテーマ
キー・サウンズ・レーベル 1,200円
◆ EGOIST
「名前のない怪物」
supercellのryoが手掛けるEGOISTは『ギルティクラウン』の楪いのり(chelly)を擁する架空の音楽プロジェクトとして発足。エッジィな音楽性には毎回度肝を抜かれるが、この曲もすごい。ソリッドなドラムンベース×漆黒のダブステップをロックのマナーで縫合したような、美しくも猟奇的な映画の如きサウンドが素晴らしい。
EGOIST「名前のない怪物」
『PSYCHO-PASS サイコパス』EDテーマ
ソニーミュージック 1,165円
◆ DEAN FUJIOKA
「History Maker」
『ユーリ!!! on ICE』サイドからオファーを受け、ディーン・フジオカが同作のために「魂を込めました」と語るほど思いを込めて書き下ろしたこの曲は、2016年アニソンシーン屈指のヒットナンバーとなった。ワルツのリズムとEDMのメロディアスなダイナミズムが融合した傑作。ディーンのアスリートに向けた熱いメッセージも泣ける。
DEAN FUJIOKA「History Maker」
『ユーリ!!! on ICE』OPテーマ
A-Sketch
※iTunes Storeなどで配信
◆ Boom Boom Satellites
「Lay Your Hands On Me」
2016年、脳腫瘍のためこの世を去った川島道行の遺作にして、BBSとしても最後のシングル。透明感のあるシンセサウンドと多幸感に溢れたビート&メロディ。そしてその上をまるで漂うように、川島のボーカルが舞う。レイヴミュージックの最盛期を彩ったかつての名曲のような、BBS史上もっとも美しく、感動的な楽曲だ。
Boom Boom Satellites「Lay Your Hands On Me」
『キズナイーバー』OPテーマ
gr8! records 1,389円
●今回、教えてくれたのは……
冨田明宏(とみたあきひろ)さん
音楽評論家/音楽プロデューサー。音楽評論家としてはアニメ音楽が主戦場。さらに音楽プロデューサーとして声優・内田真礼、黒崎真音ほかのプロデュースや、数々のアニメ主題歌も手掛けている。
2017.03.04(土)
選曲・文=冨田明宏
撮影=平松市聖
協力=アニメイト池袋本店