村おこしのために建てられたロッジ

清流のそばに立つロッジの空気はいかにも清らか。こんな東屋での食事もできる。

 せっかくコスタリカまで来たので、もう2軒、話題のホテルへ行くことに。

 2番目に訪れた「エル・シレンシオ ロッジ&スパ」は、グルメグループで知られるルレ・エ・シャトー、コスタリカ初の加盟ホテル。中央火山帯の国立公園に隣接する、これまた緑深いところだ。

 でも「パクアレロッジ」とちがいこちらは高山。熱帯雲霧林で、朝晩は霧も深いし、寒い。夕方になると部屋のヒーターがつき、ターンダウン時にはベッドに湯たんぽが仕込まれる。

 ちなみに、この気候帯のちがいもコスタリカのウリとのことで、ちょっと移動するだけでいろいろな気候を味わうことができる。熱帯サバナ気候もあれば高原、高山、湿地などなどあり、カリブ海側と太平洋側でも違う気候だそうだ。

シーツは高級エジプト綿で、マットレスも最適な硬さ。いちばんオーソドックスなアップスケール・スイートでもバルコニーと半露天のジャグジーが付いている。

 そしてこのロッジは、すぐ近くにあるバホス・デル・トロという人口200人の村おこしのために立てられた。オーナーはやはりコスタリカ人で、すでに太平洋側のビーチで同様の村おこしホテルを建て成功している。実際、ロッジのスタッフの80%以上が、この村の人たちだ。

ロッジの敷地内にもユニークな花がたくさん。バナナの花や食虫植物など、散歩するだけで面白いものに出会える。
どんな小さな村にもあるもの。警察とバーとサッカーグラウンド。写真の警察署の両サイドにバーが立っているのがおかしかった。

 アクティビティにも「村を訪ねる」ミニツアーがあって、参加するとオルガさんの家でトルティーヤづくりを習ったり、ドン・マルティン氏の私設蘭園を見せてもらえたりする。

 ふつうの旅行だと、地元の人たちの生活をのぞくチャンスはあまりないが、ホテルのスタッフが床屋さんで散髪していたりとハプニングいろいろ。やはり村出身の“エコ・コンシェルジェ”の案内によるツアーはかなり面白い。

ドン・マルティン氏の私設蘭園では、約400種類もの蘭を見ることができる。日本には約230種類しかないので、この庭の充実ぶりがうかがえる。熱帯雲霧林の気候は蘭には最適だそうで、コスタリカにはじつに約1600種類もの蘭があるそうだ。

 そしてメインの食事はというと、まずサービスがとっても洗練されている。なんでもこのロッジ、海外からのゲストよりも、むしろサンホセのお金持ちが週末を過ごしに来るほうが多いのだとか。サンホセから約90分という土地柄もあってか、ワインのすすめ方からして手慣れていた。

ティピカルな朝食「ガジョ・ピント」。黒豆ゴハンとスクランブルエッグ、パン、コーヒー。いろいろなところで食べたが、ここのがいちばんお洒落だった。お味もナイス。でも、重労働のお百姓さんの朝食だからハイカロリーなんだって!

 ちなみにソムリエのカルロスはNYで修業した情熱ソムリエ。グラスワインだと割高なので、ボトルで注文して残ったらセラーで保管し、明晩出しますよなんてすすめてくれた。もちろん部屋へのお持ちかえりもアリ。

 残ったワインを部屋にというのはよくあるが、セラーで預かってくれるなんて珍しい。ガンガン飲めない人には、素敵な配慮だと思う(このロッジは2泊以上しないと泊まれないので、こんなアドバイスが可能なのかも)。

 村おこしからの創業といい、湯たんぽやワインなどのきめ細やかな配慮が魅力的なこのロッジ。スパのマッサージも極上テクにて、しかもリーズナブルなので、ぜひともお試しを。

左:お昼に食べた温野菜のセビーチェは、ビールにぴったり。野菜は、敷地内のオーガニック・ファームのもの。いまどきのファーム to テーブルだ。
右:コスタリカ式コーヒーの淹れ方は、ネルドリップだがお湯はドボドボ豪快に注ぐ。蒸らすとかはしないもよう。コロンビアから来たスタイルらしい。ホテルでも朝食のときは、テーブルで淹れてくれる。部屋にもミニドリップの道具と挽いたコーヒーが常備されている。

El Silencio Lodge & Spa
(エル・シレンシオ ロッジ&スパ)

所在地 Bajos del Toro, Alajuela
電話番号 2476-0303
http://elsilenciolodge.com/

2017.02.27(月)
文・撮影=大沢さつき