目の前で繰り広げられるアートな美味

 池袋の西口を出て、劇場通りと呼ばれる通りを右へ。ビジネスホテルやラブホテルが立ち並び、少々猥雑な空気漂う北池袋になります。

 しかし、一歩路地を入れば鰻の名店「かぶと」や、ラーメン激戦区においてつねにベストスリーにランクインする「Hulu-lu」など、うまい店も点在するなかなか面白い街なのであります。

 この地で長く焼肉店を営んできた「あもん」が、右隣に「あもん ヨコ」という冗談のような店をオープンしたのは2016年の9月。ほぼ常連客相手だったため、情報もあまりなく、謎の存在だった店にお邪魔する機会を得ました。

 引き戸を開け、中に入ってびっくり。ゆったりとした贅沢空間の中央に鎮座ましましているのは大きな囲炉裏! これからいったい何が起こるのか。

和と洋が混在したシックな店内は、15名まで利用可能。

 メニューにあるのは、おまかせコース(6,000円)と極上コース(9,000円)のみ。しかし、予算に応じてアレンジ可で、この囲炉裏で鮎や鮑を焼いたりしたこともあるそう。この日は10名貸し切りで極上コースをいただきます。

 「今日のラインナップをお見せしますね」

 と言うのは、あもんグループのオーナー、そしてシェフでもある大山さん。

 業界歴16年の辣腕です。牛肉は神戸牛を中心に使用。長年付き合いのある業者から仕入れております。

牛タン、ランプ、乾燥しないようにと油で巻かれた小鹿。

 囲炉裏とキッチンの間にはカウンターがあり、すべての料理の仕上げはここで行なわれます。

 華麗に繰り広げられる仕事は、料理好きにはたまらない光景。ショーを見ているような気分にさせてくれます。ザ・ステージ! という感じ。

 実は、劇場型レストランって実はあまり好きじゃない。ちょっと不安。ここはどうかしら。

生ビールのサーブもこちらで。ついつい頼んでします。

 ホール担当の横井さんとふたり、“阿吽の呼吸”でサービスが行われます。

 前菜は、昆布じめサーモンや長ナスのエストラゴンなど。

繊細な味つけにセンスを感じつつ、楽しくスタート。

 続いて、なにやら可愛いらしいものが登場。メニューには「ヨコ式ミニバーガー」と記載が。

 ジューシーなパティの中央にフォアグラ。噛むとじわ~っと広がるうまみ。こいつ、小さいのにめちゃくちゃ満足感がある!

バンスは、近所にある評判のベーカリーに粉や焼き方指定して作ってもらっているそう。ばっちりのマリアージュ。

 ココット皿には茶碗蒸し。目の前でトリュフをたっぷりと削ってくれます。もう、この香りだけで一杯飲めそう。おおっ、この茶碗蒸しのなかにもフォアグラが。

百合根がいいアクセント。それにしてもこの茶碗蒸し、ダシが最高にうまい。

 「日替わり酒肴いろいろ」

 昆布じめにしたミノにピリ辛のタレをかけたものは、下に金針草。鹿児島の阿久根豚、肉の雲丹巻きなど、5種。

 ひとつひとつ手間がかかっているのはもちろん、サーブの直前にバーナーで炙るなど、エンタメ的要素もあり、宴は大いに盛り上がります。

 もうこの段階で不安はすっかり払拭されました。

それぞれを美しくデコレーション。それはまるでアートのよう。

2016.12.19(月)
文・撮影=Keiko Spice