標高194メートルの仏ノ山峠を挟んで近接する茨城県笠間市と栃木県益子町。関東の二大陶芸産地として歩みをともにしてきた両エリアは、車で30分ほどと意外に近く、クラフトファンにはおなじみのハシゴコース。この笠間+益子=「かさましこ」をもっと知るため、地元作家と“陶論”です。
伝統を踏まえた、今のカタチ・今の笠間
■人気のプリーツワークなど陶芸の世界に涼風をもたらす
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額賀章夫
東京都生まれ。東京造形大学、茨城県窯業指導所を経て1993年に笠間で独立。「指導所でろくろの勉強をし、その後に向山窯(こうざんがま)の増渕浩二さんからも教えてもらいました。その技や笠間のよさを広く伝えたいと思っています」との言葉どおり、2013年の「カサマ・プレート」など”らしさ”を意識した作品の発表や、地元の土を積極的に使うなどの活動も。胴の青が印象的な花瓶は最新作「インディゴ」シリーズから。
■老舗の看板を背負いつつ作る普段使いのカジュアルな器
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伊藤慶子
笠間市出身。笠間焼発祥の窯元といわれ、江戸期から続く『久野陶園』の14代目。「継ぐつもりはなかったのに、父が亡くなったことで結局帰ってきてしまった」と笑う。「若い時は”家”から抜け出したかったんですが、意識するほど作るものが気持ち悪い出来になって……。最近やっと自分らしいものが作れるようになりました」。英字を配したモダンな器に、その芯が見える。
■プロダクトデザイン的発想の自由でカワイイ器たち
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小堤晶子
福島県生まれ。商業車を中心にカーデザイナーとして活動したのち、陶芸に憧れて笠間に移住。作陶はほぼ独学だが、笠間の環境と周りの人に恵まれたことで活動できていると話す。「仲良くなった人が自然に、急須を作る時はこうしたらいい、というようなことを教えてくれる。そんな笠間に助けられています」。車や動物モチーフのキュートな器に、幅広いファンが集まる。
■笠間の土の特徴を活かした野趣のある作風
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酒井敦志之
笠間市生まれ。父親が陶芸家という家庭に育ち、茨城県立笠間陶芸大学校へ。現在は主に焼締めに取り組み、写真のような和食器からマグカップのような洋食器まで多様な器を手がける。「この皿にも黒い斑点が出ていますよね。こういうのを出さない方法もあるんですが、僕はあえて出しています。もともと笠間の土の欠点とされていたこの粗っぽさを活かし、魅力へと変えたい」。
【立ち寄り陶芸SPOT】
●見る
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建築家の伊東豊雄が、陶芸家の里中英人のアトリエ兼住居として1981年に建てた『笠間の家』。現在はカフェとしても営業しており、全国から建築・陶芸ファンが集まる。
●作る
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笠間芸術の森公園内にある『笠間工芸の丘』では、ろくろ、手ひねり、絵付けなどの陶芸体験が可能。
●買う
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地元作家の作品を積極的に扱う『回廊ギャラリー 門』。自然と作品が見事に調和。
回廊ギャラリー 門
http://www.gallery-mon.co.jp/
2016.11.11(金)
Text=Toshie Oowa
Photographs=Tamon Matsuzono
CREA 2016年12月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。