自由なクリエイションを育む地

 全国に点在する陶産地のなか、「かさましこ」の特徴は、○○焼という枠を超え、個性的な作陶をする個人作家がたくさんアトリエを構えていることかもしれない。今回集まった作家の作品を見ても、まさに8人8色。このユニークさの背景には、産地としての歴史が関係している。

 240年あまり続く陶園で作陶する笠間の伊藤慶子さんは、「昭和30年代に市をあげて個人作家を誘致したと聞いています」と話す。笠間のイノベーションは、陶製の甕やすり鉢の需要が減ったその時代に、多方面から作家を招いたことにはじまり、他方の益子では、東京都出身で民芸運動の中心だった濱田庄司が活躍したことで、“よそもの”を歓迎し、ともに歩む姿勢が根づいた。

 こうして作家が個性を発揮しやすい雰囲気が培われた「かさましこ」では、作家同士も自然と顔見知りになる。仲間同士が時期を合わせ、仕事場を公開し販売やワークショップをする“オープンスタジオ”も近年はじまり、熱心なファンが全国から集まる。年1回行う額賀章夫さんは、「僕ら作家側もどんな人に喜んでもらえているかがわかるし、お客さまには作り手の時間を楽しんでもらえる。人と人とのつながりが生まれます」と話す。恒例の『笠間の陶炎祭』や春秋の『益子の陶器市』は既に何度も訪れた、という人にオススメだ。

 陶産地としての歴史と、同時代の作家同士の熱が共存する自由な雰囲気は、訪れる私たちにも心地いい。街なかにはギャラリーや、作家の器でお茶が飲めるカフェも増え、ますます楽しい「かさましこ」。リピート必至のデスティネーションである。

GO KASAMASHIKO via TOKYO
理想のクラフト郷へ ─笠間と益子の魅力─

「陶芸の里」、笠間と益子(=かさましこ)の陶器の販売を中心に2017年2月に東京・渋谷のヒカリエで開催。

日程 2017年2月16日(木)~2月22日(水)
時間 11:00~20:00 ※2月16日は15:00~、2月22日は~18:00(予定)
場所 渋谷ヒカリエ8F「8/COURT」

【取材協力】
かさましこ観光協議会

電話番号 029-301-2730(茨城県企画部地域計画課内)

2016.11.11(金)
Text=Toshie Oowa
Photographs=Tamon Matsuzono

CREA 2016年12月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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