最先端というべき現代アートが
岡山市内のあちこちに

エストニア生まれのカーチャ・ノヴィスコーワ、フランスのピエール・ユイグら世界16カ国31組のアーティストが岡山市内で作品を公開。総合プロデューサーには岡山出身のストライプインターナショナル社長・石川康晴氏が就任。Katja Novitskova exhibition view, Spirit, Curiosity and Opportunity, Kraupa-Tuskany Zeidler, Berlin, 2014 courtesy Kraupa-Tuskany Zeidler, Berlin Photo:Hans-Georg Gaul

 ビエンナーレ(伊語で「2年に一度」の意)やトリエンナーレ(「3年に一度」)という言葉、最近よく耳にする。日本の各地域で2~3年周期の芸術祭が催されており、アート用語として定着した感あり。

 今年も大きなところだけで瀬戸内、愛知、山形、琵琶湖、それに次ページ以降で紹介の埼玉や茨城……、続々と開かれている。その中でぜひ注目したいのはこちら。岡山市でのトリエンナーレ「岡山芸術交流2016」。

 会場となるのは、城下町の風情を残す岡山城周辺。石垣やお濠、市内を縦断する旭川の流れも望めるトラディショナルな風景に点在する計八カ所他で、31組のアーティストが作品を展示する。県庁前広場や林原美術館、天神山文化プラザまで。戸外も屋内もある各会場で、どんなものが観られるかといえば、これぞ最先端というべき現代アートの数々。

Philippe Parreno With a Rhythmic Instinction to be Able to Travel Beyond Existing Forces of Life(Green, Rule #1), 2014 Installation view at the 56th Venice Biennale “All the World's Futures”(C)Philippe Parreno Courtesy of the artist, Esther Schipper, Berlin

 ローレンス・ウィナーやペーター・フィッシュリ ダヴィッド・ヴァイスは、言葉を素材に用いた作品を戸外で大々的に展示。広告看板と見紛いそうだが、そこに込められたメッセージを受け取りたくなって、ついしばし足を止めてしまう。

 宇宙からの落下物に見立てたオブジェを街の一角に展示するのはライアン・ガンダー。フィールドワークをベースに、写真作品で場所や人が持つ記憶の在り方を探る下道基行や、人と人が出会って生まれるコミュニケーションから作品を紡ぐ島袋道浩も登場する。

Ryan Gander Visualization of Because editorial is costly 2016 Stainless steel, rubble Sculpture:2315(w)×2008(h)×2209(d)mm Crater:variable (C)Ryan Gander Courtesy of the artist, TARO NASU

 彼ら出品アーティストに共通しているのは、世界のアート界で名を知られ、注目を浴びる存在であること。また、思想やコンセプトをとことん追究する作家揃いであることも挙げられる。何というか、手加減なしだ。「地域を盛り上げるお祭りでもあるのだから、少しは分かりやすく親しみやすい作品を」といった配慮は、ほとんど見られない。

 いや、そのほうが面白いに決まっているから、これでいいのだ。せっかく芸術祭に出かけたら、まずはアートをしっかり堪能したい。小難しくて取っ付きにくそうであっても、作り手が「これが本物だ、一番かっこいいでしょ」と本気で提示するものに、出合いたいではないか。

 観る側に何かを受け取る気持ちがあるのに、目の前にある作品がどうにも響いてこないようなら、それはたまたま作品との相性がよくなかっただけ。または、アーティストや主催側が悪いのである。

 本気でぶつかり合えるアートが、岡山芸術交流の会場にはたくさんある。構えず触れ合ってみては? 同時に、岡山の風土やおいしいものをたっぷり味わうのもお忘れなく。

『岡山芸術交流 2016』
会場 旧後楽館天神校舎跡地ほか、岡山県・岡山市内各所
会期 2016年10月9日(日)~11月27日(日)
料金 一般1,800円(税込)ほか
電話番号 086-221-0033(岡山芸術交流実行委員会事務局)
http://www.okayamaartsummit.jp/

2016.10.02(日)
文=山内宏泰

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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