vol.10 札幌
都内で頼むのをぐっと我慢して、札幌に出かける
6月の北海道は心地がいい。
なんといっても梅雨がないのである。空気がカラッとしていて涼やかな風が時折、頬を撫でる。
街を、森を歩くのに、なんといい季節だろう。だから、出来得ることなら6月は、避暑ならぬ避梅雨で北海道に旅をして、新緑に輝く山々と大地に触れることにしている。
山奥ならまだ山菜も収穫できるが、この時期に食べたいのは、アスパラガスである。

5月から都内でも「白アスパラガス」の名前がメニューに載るが、頼むのをぐっと我慢して、札幌に出かける。
めざすは、宮の森にあるフレンチレストラン「ラ・サンテ」。この店のスペシャリテ、「北海道産白アスパラガスの笹の塩釜焼き」を食べるのである。

アミューズは、小さな器に入れたクリームチーズとカブのムース上に、黒千石豆と十勝マッシュルームで作った、土に見立てた茶の粉がかけられている。

そこへニョキッと白アスパラガスの穂先が顔を出す。土から掘り出すように串でアスパラを取り出して食べる。
ああ、これから現れるアスパラへの期待が高まり、アスパラをいただく感謝が深くなる。粋な突き出しである。

続いてのスープも白アスパラガス。ほのかな甘さ中に、苦味がかすかに現れて、食欲を刺激する。

さらには、脂が体全体にしっとりと回って、しなやかできめ細かい身がはらりと舌の上で崩れる「時鮭のスモーク」に顔をほころばす。
2016.06.16(木)
文・撮影=マッキー牧元