2027年春に始まる連続テレビ小説『巡るスワン』の撮影が、長野・諏訪で動き出した。9月2日にクランクイン、14日には諏訪市湖畔公園で取材会が開かれ、主人公・小松美咲を演じる森田望智と、制作統括・桑野智宏氏が現場の手応えを語った。脚本はNHKのドラマを初めて手がけるバカリズムである。
テーマがないことをやってみたい
舞台は、諏訪市など諏訪湖周辺をイメージした架空の町・長野県佐和市。美咲は佐和署生活安全課の巡査。市民の相談ごとから防犯の啓発まで、扱う範囲は広い。事件が起こらないことが成果とされる部署で、その仕事は新聞にもテレビにも載らない。
初日に撮影したのは第2週のシーンだという。
「バカリズムさんらしい、ちょっとした事案の相談があって、そのお宅にお邪魔するというシーンからクランクインしました」(桑野氏)
ロケは、諏訪湖が目の前に広がる足湯。湖があり、山があり、街がある。高い建物がないぶん空が広く、それだけで心地いい。
「湖を中心として山々に囲まれて、でもちゃんと家やビルもあって、視聴者の方が見て気持ちのいい場所に見えるんじゃないかなと思いました。今回はバカリズムさんのコメディーですので、朝に笑いと、穏やかな風景と、気持ちのいい時間を過ごしてもらう場所がいいなと思って」(桑野氏)
この日の撮影は、第6週放送予定の、古川琴音、富田望生との幼なじみ3人組が足湯をしながらしゃべるシーンだ。横並びの3人がただ喋り、笑う。その日常風景は、遠目に見るだけですでにバカリズムワールドだった。
バカリズムワールドというと、『ブラッシュアップライフ』や『ホットスポット』を連想する人が多いだろう。しかし、桑野氏は笑ってこう付け加る。
「今のところは宇宙人も出てきませんし、タイムリープもしません」
刑事に憧れて警察官になったのに、配属先は生活安全課。何かを成し遂げるでもなく、大きく成長するでもない。朝ドラとしては異質な設定だ。
「テーマがないことをやってみたいと思ってスタートしているんですよね。朝の楽しいひとときになったらいいなという思いだけで始めていて、現代に訴えたいことも、メッセージ性も、正直ありません。でも、見ていただいた方が学校や通勤に出る前にほっこりすることって、テーマやメッセージを描くのと同じぐらい価値があるんじゃないのかな。そう思って、一生懸命やってはいます」(桑野氏)
メッセージ性はない、と公言する制作統括は珍しい。ではバカリズム作品の何を朝ドラに持ち込むのか。桑野氏の答えはこうだった。
「何かを成し遂げた人とか、挑戦した人とか、成長する人ではなくて、毎日を多くの人と同じように真面目に生きている人たちを好きになってしまうような作品だと思っています。それを笑いに包んだり、ファンタジーが入ったりしつつも、そこが一番の根幹にある。それがバカリズムさんの魅力ですし、今作においても同じことだと思っています」
