2024年5月、多くのファンに惜しまれつつ暖簾を下ろした阿佐ヶ谷の名店「うさぎや」。その終幕から約2年を経て、2026年4月3日、同じ阿佐ヶ谷の地に新たな和菓子店「たおや」が産声を上げた。
店を切り盛りするのは、「うさぎや」の味を長年支え続けた菓子職人と、販売スタッフだった女性たち。新たな門出を迎えたおふたりに、その胸中を聞いた。
「うさぎや」から託された、愛あるバトン
「うさぎや」の味を継ぐ店が誕生する――。編集部にそんな心躍る一報が届いたのは、その道のりを温かく見守ってきた菓子研究家の福田里香さんからだった。
その店の名は「たおや」。
「うさぎや」最後の日をともに見届けた、菓子職人の中屋直子さんと、販売スタッフの込山裕美子さんのふたりが阿佐ヶ谷で始めた和菓子店だ。
「私たちも『うさぎや』の閉店を心から惜しんだひとりでした。それぞれ別の道を歩んでからも、心の片隅で“あの味を復活させたい”という想いを抱き続けていました。
でも、『うさぎや』の味を自分たちが継いでいいものか……。葛藤の末、一喝されることも覚悟で、元オーナーのもとを訪ねました」と中屋さんと込山さんは口を揃える。
かつて「うさぎや」を切り盛りしていたのは、女性オーナーと菓子職人の弟さん。
「阿佐ヶ谷の街に、もう一度あの味を」――。
御年92歳と90歳を迎えたおふたりを前に、真っ直ぐにその想いを伝えると、当初の心配をよそに、そっと背中を押してくれたという。
“あのどらやき”の復活を待望していたのは、阿佐ヶ谷の人たちも同じだった。
「阿佐ヶ谷で物件を探し始めると、うさぎやを知る近隣の方々が親身になって協力してくれました。そのおかげで、この上ない場所が見つかりました」(込山さん)
こうして、「うさぎや」があった場所の目と鼻の先に店を構えた「たおや」。
店内には、棟方志功の書や武者小路実篤の色紙をはじめ、うさぎの置物など、「うさぎや」から譲り受けた貴重な品々がちりばめられ、同店との深い絆を物語っている。
