劇団・玉田企画を主宰する劇作家/演出家の玉田真也は、青年団を率いた平田オリザの作風を発展的に継承してきた、現代口語演劇のトップランナー。そんな彼は、玉田企画の前作『地図にない』で、地元の金沢を訪れ、劇作のためのリサーチを敢行。果たして、同作はその成果が如実に出た意欲的な群像劇に仕上がっていた。
そして、5月22日から31日まで三軒茶屋のシアタートラムで上演されるのが、男性ブランコの浦井のりひろや青年団の能島瑞穂が出演する新作『光る』。今回は執筆前に玉田が沖縄に赴き、創作の種となるような体験をし、それを作品にも反映させているという。身近な人や仲の良いコミュニティをモデルにするだけでは得られない、広がりのある作品になりそうな予感だ。
物語の舞台はゴーカートのサーキットの事務所。平田オリザは美術館のロビーなど、複数の人が出入りする「セミパブリック」な場所を劇作に多く用いるが、『光る』における事務所もその役割を果たしそうだ。沖縄でのリサーチから演劇を通して描きたいことまで、玉田に話を訊いた。
» 脚本の着想は、知らない土地から
» ガマの隣にあったサーキットが『光る』の始まり
» 映像とは違う、演劇だからこその表現がしたい
» 演劇を通じて玉田真也が描きたいこと
脚本の着想は、知らない土地から
――玉田企画の前回公演『地図にない』では、身の周りにいる人をヒントに脚本を書くのではなく、震災があった実家の金沢に戻って着想を得ていましたよね。今回は沖縄に行かれたとうかがっています。
そうですね。普段と異なる土地に赴いてリサーチをすると、日常では味わえない体験を得られるから、発想の範囲が広がるんですよね。これは面白いなと思ってもう一回やろうと、今回は沖縄に行きました。金沢の時は震災の直後だったから、社会的に大きなインパクトがあった場所で、その影響が街自体にあって。だから、リサーチの過程でそういう雰囲気も一緒に摂取していたと思います。ただ、そう言いつつも、社会的な事象からはある程度距離を置きながら作るようにしていました。結果的に、すごくいいバランスで作れた気がしたんです。今回も同じことを意識しましたね。
――沖縄は、戦争の記憶が貼りついている、まさに社会的な事象に溢れた場所ですよね?
そうなんです。でも、最初は基地とか戦争を取り挙げるために沖縄に行ったんじゃないんです。そういう記憶に溢れた土地だけど、創作においてはそこを剥がしながらやったというか。ただ、剥がしながらやっても、きっと何かしら入ってくるだろうとは思っていましたね。実際、入ってもきたし。でも、そのくらいの距離の取り方でいいと思っていて。
――戦争の記憶に特化した作品は、マームとジプシーという劇団の『cocoon』などもありますが、それとは発想が違うんでしょうね。ちなみに印象的だった場所は?
南北両方行ったんですよ。名護市に行って美ら海水族館も見ましたし、できたばかりのジャングリアっていうテーマパークもまわって。その後那覇に行ったんですけど、沖縄はやっぱり戦争の遺跡が多いんですよね。 観光地なんだけど戦争の記憶が残っている。でも避けては通れないと思って行ったわけですよ。例えば、ひめゆりの塔は有名な場所だし、教科書的にも重要な場所だから勉強のつもりで行って。けど、思いのほかグッとくるというか、刺さるというか……。展示がすごくよくできているんですよ。
――具体的には?
ひめゆりの塔のミュージアムの目の前にでっかい穴があるんです。直径4,5メートルくらいのでっかい穴。要は戦争の時に学徒の女の子たちが野戦病院に使っていた病院壕なんですね。すごく深いから覗き込んでも真っ暗で。で、それを見た後に玄関に入っていって展示を見ていくと、おのずと感情移入してしまうわけです。こうやって治療したんだ、こうやって死んでいったんだって。それで、いちばん最後の部屋に亡くなった子たち全員の写真が壁に貼ってあって。どんな子だったかとか、どんな風に死んでいったかっていうことがいっぱい書かれていて。それを見て出てくるとまたでっかい穴があるんですね。うまいって言っていいかわからないんですけど、構造がよく考えられていて、心に響くというか……効くんです。防空壕みたいに使われていた穴もあれば、自然に開いてる穴もある。とにかくめちゃくちゃ穴が多くて、この街の穴の下には琉球王国の歴史そのものがあるんだなと。その感じはすごく興味深かったです。
