角質層の奥まで届く成分も

 医薬部外品は美白やシワ改善などの効果が謳えるが、医薬部外品も化粧品も浸透するのは角質層までのはず。深いシワは角質層のさらに奥にある真皮層にまで刻まれているというのに、なぜ改善が期待できるのだろうか。

「原材料メーカーのデータで、角質層の奥まで浸透する成分があることが、エビデンスをもって証明されています。『バリア機能があるから角質層の奥には届かない』と主張する人もいますが、分子量500ダルトン以下の物質は角質層のバリアを越える。これは明らかな事実です。ただ、薬機法上、商品とセットでその表現をすることはできません」

 では分子量500ダルトン以下の成分を使えばいいかというと、そうとも限らないのがもどかしい。

「保湿成分のヒアルロン酸は、分子量が500ダルトンより小さいものもあれば、大きくて皮膚の表面にとどまるだけのものもあります。後者には肌表面から水分が蒸発しないようにする大切な役割があるので、分子量だけで判断もできないんですよね……」

“保湿”と“日焼け止め”が基本

 成分についてはハッキリとしたことが言いにくいけれど、美肌のために大切なことは、スキンケアの基本を大切にすることだと上原先生は断言する。

『保湿』と『日焼け止め』をおろそかにした肌にいい成分を補っても、無駄。皆さん、思った以上にこの基本ができていません。洗顔後の肌がカピカピなら洗浄力が強すぎ、夕方に乾燥するならメイク前の保湿が足りていない証拠。まずは、一日を通して肌の乾燥感がない状態を目指しましょう。日焼け止めは専用のものを使い、保湿にはセラミドやヒアルロン酸が配合されている化粧水や乳液・クリームがおすすめです。私はスキンケアで職業すら変わる体験をしたので、皆さんも人生が変わるような化粧品と出会えることを願っていますし、スキンケアできれいになって、幸せになっていただきたいです!」

知らないと損!? スキンケアの意外な真実

 “良さそう”なイメージに惑わされず、化粧品を見極める目を育てよう!

【誤解1】医薬部外品のほうが化粧品より成分濃度が高くて効く

化粧品のほうが、高濃度に配合できる成分もあります

「シワ改善や美白で人気の『ナイアシンアミド』は、医薬部外品の化粧水では0.1~1%、乳液・クリームでは0.1~3.5%と配合量が決まっています。ところが不思議なことに、化粧品には上限がありません。私の開発する化粧品では、ナイアシンアミドを最高で12%配合しているものがありますが、医薬部外品とは違ってシワや美白に対する効果は謳えません」

【誤解2】有効成分が成分表の上のほうに書いてあるから安心だ

1%以下のものは順不同なので、有効成分をわざと上のほうに書く会社も

「化粧品の成分は配合濃度の多い順から書くというルールがありますが、1%以下については順不同なんです。極端な話、1分子でも入っていたら『この成分が入っていますよ』と書いてOKになってしまいます。ヒアルロン酸のように微量でも十分な効果を発揮する成分もあれば、ほんの1滴入れただけの成分も並記できてしまうのが実情です」

【誤解3】新しい成分は医薬部外品のほうが早く取り入れられる

最新の成分(ペプチドなど)は、まず化粧品として世に出ることが多いです

「分子量が小さく、エイジングケア成分としても最近人気のペプチドは、開発競争が激しく、新しいものが次々に誕生しています。医薬部外品として申請して承認されてという時間の流れでは到底追いつきませんし、制限が少なく配合濃度も自由な化粧品のほうが結果的にいいものをつくれることが多いので、私自身はあえて化粧品を選択しています」

【誤解4】とろみがあって濃厚な液だから保湿成分たっぷりだ

それは「増粘剤(片栗粉のようなもの)」の感触かもしれません

「化粧品のとろみに使われる『増粘剤』は、テクスチャーの向上には寄与しても、有効成分を増やしたり、浸透をよくしたりする効果はありません。料理に使う片栗粉をイメージするとわかりやすいですが、片栗粉自体に味はなく栄養素もほとんどないですよね。とろみがあるので保湿力が高そうなイメージですが、残念ながらその効果も期待できません」

●お話を聞いたのは……

形成外科医 上原恵理(うえはら・えり)先生

美容外科医、美容皮膚科医、美容クリニック「THE ONE.」院長。日本形成外科学会認定専門医。群馬大学医学部医学科卒業後、大学病院や美容クリニック勤務を経て、2020年神楽坂に開業。オリジナル化粧品3ブランド34製品の開発も手がける。正しいホームケアと美容医療の情報をSNSで発信。SNSのフォロワーは計約35万人。

CREA 2026年春号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。