「コレステロール」「AST」「ALT」は簡単に改善できる
では、もう一つの「スピード」について、先ほど「将来的にどのくらいの速さで体調が悪化したり、病気を発症したりするか」を意味するものだと説明しましたが、改めてBさんとCさんの例で見てみましょう。
Bさんは健康診断を受けて、「病気の発症までに余裕がない」ことがわかり、頑張って生活習慣を改善させたとします。反対にCさんは「余裕がある」ことに安心して、毎日続けていた運動をやめてしまい、健康を省みない食生活を送るようになったとします。
すると、下の図表(3)のように、「レベル」が低かったはずのCさんの状態が一気に悪化して、病気を発症してしまう。逆に「レベル」が高かったはずのBさんは、何とか現状を維持して、発症を免れているということです。
図表(3) 病気の「スピード」
先ほどの「レベル」は元の状態に回復できないことが特徴でしたが、「スピード」の方は乱れた生活習慣を続けていれば一気に速まりますし、逆に改善に努めれば、スピードを落とすこともできる。この変動しやすさが特徴です。
例えば、血液検査では、コレステロールの数値も測ります。血管内のコレステロールの濃度が高くなれば、当然、動脈硬化に発展してしまいますが、コレステロール値それ自体は、食事などによって簡単に変動します。つまり、一生懸命、生活改善に取り組めば、それがすぐさまコレステロール値に反映して、動脈硬化も遅らせることができるのです。
血液検査で分かる「AST」や「ALT」などは、肝臓の機能を表していますが、この数値も実は「スピード」の項目に当たります。
どちらも「現在の肝臓の炎症の程度」を示しており、脂肪肝やアルコールの摂取などで肝臓にダメージが加われば、簡単に肝機能障害のリスクが上がります。そのまま放置すれば肝硬変になってしまうでしょう。逆に言えば、脂肪肝を緩和し、アルコールを控えれば、ASTやALTは簡単に改善され、肝硬変を発症するまでの「スピード」を抑えることができるのです。現に、体重を5%落とすだけで、7割の方が肝機能を正常に戻すことができたというデータもあるくらいです。
改めてまとめると、過去のダメージの蓄積が「レベル」であり、将来的に病気を発症するまでの速さが「スピード」です。
伊藤大介(いとう・だいすけ)
1984年、岐阜県生まれ。東京大学医学部卒業後、同大医学部外科博士課程修了。肝胆膵の外科医を経て、その後、内科医・皮膚科医に転身。日本赤十字医療センターや公立昭和病院などを経て、2020年に一之江駅前ひまわり医院院長に就任。1日に約150人、年間3万人以上の患者を診察する。日本プライマリ・ケア連合学会認定医、同指導医、日本病院総合診療医学会認定医、マンモグラフィ読影医。2025年に日本外科学会優秀論文賞を受賞。

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