〈「あのイカキングって結局どうなった?」かつては税金2500万円のムダ遣いと非難され…現地を訪れてわかった“驚きの現状”とは〉から続く
輪島市マリンタウンに、これまでにない形の飲食店が誕生した。「mebuki -芽吹-」。ミシュラン1つ星を獲得したフレンチの名店「ラトリエ・ドゥ・ノト」でシェフを務めていた池端隼也氏をはじめ、2024年元日に起きた能登半島地震後の炊き出しをきっかけに集った市内の飲食店メンバーが営む料理店だ。
フレンチ、割烹、居酒屋、海鮮丼屋、和食、スペイン料理――ジャンルは様々だが、共通するのは「能登の食」への深い愛情である。
「牡蠣のミルキーさがすごい」能登の食材が光る一皿
店のイチオシメニューの一つが、能登産の牡蠣を使ったラーメン「牡蠣そば」だ。中島(七尾湾)で養殖した牡蠣を冷凍保存し、油でじっくりと煮るフレンチの技法「コンフィ」で抽出したエキスを使う。池端氏が「牡蠣のいいとこしか出てない感じ」と語るミルキーなオイルとエキスをソースに仕立て、牡蠣の身は七面鳥のミンチと一緒に叩いて具材として使用する。
七面鳥は出汁のベースにもなっている。輪島には、日本では数少ない七面鳥生産者がおり、その鳥ガラを使ったラーメンが池端氏の得意料理の一つだ。「寒くなるとむちゃくちゃ美味しくなる」という七面鳥は、これからが旬を迎える。
さらに驚くべきは、能登のハーブ農園から届く10種類のハーブだ。ミント、レモングラス、レモンバーベナなどが、濃厚な牡蠣にアクセントを加える。「これ乳製品は入ってないんですか」と問われるほどクリーミーな仕上がりだが、実は牡蠣のエキスを繋いだだけ。「一口目はポタージュみたい」と評されるスープの味わいは、まさに能登の海と里の融合である。
麺を食べたあとは、丼にご飯を投入して締めの「リゾット風」に。牡蠣のうまみを最後の一滴まで堪能できる。
震災が繋いだ生産者との絆
この牡蠣そばは、実は思わぬ副産物から生まれた。震災後の炊き出しをしていた時、牡蠣の生産者から「これ冷凍で在庫があるんだけど、なんか料理にできないか」と相談を受けたのがきっかけだった。副産物を活かす取り組みから、新しいメニューが誕生した。使用しているのは、池端氏が「むちゃくちゃうまい」と太鼓判を押す春の牡蠣だけだ。







