10月は「ピンクリボン月間」です。女性にとってもっとも罹患率の高いがんである乳がんですが、手術による乳房の欠損の可能性だけでなく、放射線治療による皮膚炎や脱毛、色素沈着、投薬による毛髪や皮膚、爪の変化など、いろいろな部位に影響が出ることが分かっています。
「アピアランスケア」という言葉を耳にしたことはありますか? これは、がん治療の手術や投薬での副作用による“外見の変化”によって引き起こされた、心理的、身体的、社会的な苦痛を軽減し、その人らしく前向きな生活を送れるように支援する医療者のアプローチを指す言葉です。広い意味では、医療者以外による整容的、精神的、社会的ケアも対象になります。
今回は、アピアランスケアの概念のもと、がん治療の副作用や生まれながらの傷跡、あざなどをメイクアップを通じてカバーする「外見ケア」に積極的かつ長期にわたって取り組んでいる化粧品メーカー、資生堂に、その可能性について教えてもらいました。
約70年の歴史を誇る「化粧のちから」

資生堂の外見上のお悩みへの対応の歴史は、1956年にまで遡ります。当時の日本には、戦禍によるやけどの跡に苦しむ人が多くいました。そこで肌や外見の悩みを少しでも解消できるようにと開発されたメイクアップ製品が、「資生堂 スポッツカバー」でした。
1995年には光の技術を応用し、青あざや赤あざ、濃いシミなどをカバーする「パーフェクトカバー」を発売。さらに2006年、病気、怪我などによる外見の変化に悩む方々にメイクアップレッスンを行う専門施設、現在の「資生堂 ライフクオリティ ビューティーセンター」が開設されました。
資生堂 ライフクオリティー ビューティーセンターが支援の“拠点”に
長年カバーメイクアップに携わっている専任スタッフの青木和香恵さんによると、「最初は、医療機関で、外見にお悩みを抱えた患者へカバーメイクを施す活動から始まりました。
現在も医療機関やオープンキャンパスなどでイベントを行っているほか、東京・汐留にある『資生堂 ライフクオリティー ビューティーセンター』内にある個室では、専門的な知識を持つスタッフが一人一人の悩みに合わせたメイクアップレッスンを行っています。
当センターには、これまで北海道から沖縄まで全国から延べ6,200人以上の方がお越しくださいました。オンラインでもカウンセリングはお受けいただけるので、一人でも多くの方に活用していただきたいと思っています」
時間は、一度につき60分~90分。「資生堂 ライフクオリティ ビューティーセンター」のホームページや電話で予約が可能。
「がんの治療で肌の色が変化してしまった方、眉が脱毛してしまった方、手術の影響による顔の左右差を気にされている方……顔だけでなく体も含めて、さまざまな肌のお悩みをもつ方が当センターにはいらっしゃいます。医療技術の進歩もあり、外見のお悩みを抱えながら仕事や学校へ通っている方も増えているため、男女問わず、メイクでカバーするニーズは年々高まっていると感じます。資生堂が培ってきた技術に加え、医療機関やがん支援団体などと情報を共有しながら研究してきたメイクアップアドバイスは、幅広い外見の変化に関する問題をクリアにできると多くの方に喜んでいただいています」