廃棄される野菜の皮や芯から酵母を培養
大東さんは天然酵母を培養するのに、パンやランチに使った、近所で採れる無農薬栽培野菜の皮や芯を用いています。本来ならば廃棄物。それらを捨ててしまわずに、毎朝汲んでくる伏見の酒の仕込み水に浸します。すると、不思議。ぷくぷくと泡が出てきて、酵母が活動開始。その酵母の力でパンをふくらませるのです。他に、ライ麦種、米の酵母、酒種なども使用。イーストは使いません。
粉にもこだわっています。スペルト小麦やライ麦は、玄麦で仕入れて石臼で自家製粉。麦を丸ごと挽いた全粒粉です。小麦は、大分の契約農家が在来品種で栽培したものを石臼で製粉して送ってもらっているのだそう。
「日々、酵母の状態が変わるので、無心でパン作りをしています。生地と向きあう神聖な時間でもあります。焼き上がって石窯から出すまで、いつもドキドキするんですよ」
大東さんが焼く定番のパンは、ライ麦やスペルト小麦100%など、約10種類。季節のパンは約7種類程。
定番の中でも「100%」のパンは注目です。
右:「スペルト小麦100%」500円。
「ライ麦100%」は、カナダ産のオーガニックライ麦を石臼で挽いて、ライ麦酵母のサワー種で発酵。どっしりと重いパンです。「噛みしめるとお醤油のような味わいがあり、和食との相性も良いと思います」と大東さん。ライ麦独特の程よい酸味があり、チーズやはちみつ、フルーツなどとの相性が抜群。
「スペルト小麦100%」は、低農薬の滋賀県産スペルト小麦を石臼で挽いて使用。スペルト小麦はディンケル小麦ともいい、古代小麦で品種改良されていない在来種。アレルギーを引き起こしにくいといわれているのだそう。「とても滋味深い、噛みしめるほどに味わい深いパン。スープと相性の良いパンです」
「米100%(粟入り)」は、京都「山田ファーム」の無農薬米を石臼で挽き、玄米ミルクを合わせて米酵母で発酵。取材時には、鉄分豊富な山形県産の粟が練り込まれていました。「粟などの雑穀は強い生命力を持っています。それを身体に取り入れられるよう、パンに入れています」と、グレイン(穀物)マイスターの資格も持つ大東さん。食べるとお米の甘みがじんわり。まるで、ごはんのような味わいです。粟のツブツブの食感も楽しい。
どちらのパンもずしりと重く、スライスして食べると、それぞれ、しっかりした風味が噛む程に口の中にじんわり広がります。
2016.02.28(日)
文・撮影=そおだよおこ