ビールの歴史を楽しみながら学べる醸造所

白と赤は、デ・コーニンクのコーポレートカラー。本社の外観ももちろん、白と赤!

 アントワープのビール取材は、デ・コーニンク醸造所。1833年に創業した、アントワープの街にある唯一のビール醸造所で、「デ・コーニンク」は「王様」を意味するオランダ語だ。

 2015年9月に、ビールの歴史や醸造の過程などを、ビデオやアトラクションを楽しみながら学ぶことができる「デ・コーニンク・ビール・エクスペリエンス・センター」ができたということで、取材させていただいた。

天井も壁も、すべてデ・コーニンクのビアグラス。よく見ると部屋全体がグラスの形になっていた。天井は泡がふんわり浮いているようだ。

 入り口を入るとすぐに大きなモニターがあり、等身大の人物が歓迎してくれる。そして奥の通路を抜けると、無数のデ・コーニンク・オリジナルグラスで囲まれた丸い空間が。よく見るとそれらのグラスが大きなグラスの形になっていてびっくり!

ふたつのモニターが、おもしろ楽しくビールができるまでを映し出してくれる。

 その奥に行くと、今度は醸造釜の中にモニターが仕込まれていて、ふたつの画面を見ながらビールの醸造過程を知ることができるようになっていた。

 両方のモニターをユーモラスに行き来する人物とアニメーション。左の画面の人が右の画面から物を取ったり、右の画面のアニメーションを左の画面の人物が説明したり。酵母菌が糖分を出すアニメーションは、すこぶるかわいくて見入ってしまうほど。ビールができるまでの各工程を楽しく知ることができる。

左にある車のフロントグラスは、中から見られるモニターになっていて、車自体も上下左右にガタガタと揺れる。右側の樽は棒に吊されていて、ふたりで前後から担ぐことができる。ふたりで担いでもかなり重かった!

 別の部屋では、ビール樽を実際に担いで創業当時の運搬方法の重さを体感したり、ビールを配達する車に乗って昔の風景をモニターで見ながら街を走る体験ができたり。車は揺れも体感できるようになっていて、ちょっとしたアトラクションだ。樽の重さにびっくりしたり、当時の車の運転の荒さに笑ったりと、身体で歴史を感じることができた。

壁に掛けられた肖像画に描かれた歴代の当主たちが、あれこれとおしゃべりしているビアカフェ風の部屋。

 その奥の部屋では、古いビアカフェの壁に肖像画が掛かっていて、中の人物同士が話をしている。言葉が理解できないと分かりづらいが、代々のデ・コーニンクの当主が「お前の時代はよかったよな」とか、「いやいや苦労したんだ」などと、それぞれの時代の話をしながら、愚痴をこぼしたり、なだめたりしているらしい(笑)。らしい、というのは、私にはオランダ語は理解できなかったから。残念。

左:最後にチーズ工場をガラス越しに見学することができた。
右:ビールについては、実際のボトルも展示しながらていねいに解説している。

 出口の近くでは、チーズ工場が見えるようになっている。デ・コーニンクは、ビールだけでなく、チーズの生産にも力を入れているのだ。出口を出たときには、なんだかビールに一層の親しみを感じてしまったのだった。

2016.03.13(日)
文・撮影=たかせ藍沙