カメラの横で意見を出し合いながらの撮影
――今回、日本映画専門チャンネルで放送される『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(以下、『みーまー』)についての思い出を教えてください。
周りの方から、瀬田(なつき)監督は面白い方、と聞いていたうえ、オファーをいただいた際に、監督のDVD化されていない過去の作品を見せてもらったら、今までに僕が見たことのない世界観の映画だったんですね。だから、もし監督の作品に出させてもらえるなら、是非やらせてもらいたいなと思いました。実際、撮影が始まってみても、監督も30歳くらいで若いし、現場のスタッフも若い方ばかりで、僕があまり経験したことのない現場の雰囲気だったんですよ。
――先の『14歳』も若いスタッフばかりだったと思うんですが、その違いは具体的にどういうところなんでしょうか?
『14歳』は監督の完成された世界観で、若いスタッフが動く感じだったと思うんですよ。一方、『みーまー』の現場は、キャストはもちろん、美術部の助手さんまで、みんながカメラの横で意見を出し合いながら、瀬田監督と一緒に作っていくんですよ。そんな環境がどこか新鮮で楽しかったですね。僕は普段、どの作品でもクランクイン前に徹底的に役について考えて、イン後に悩むことはないんですが、『みーまー』は、みーくんとまーちゃんがどういう関係性で、どういう人物としてみせていったらいいのか、など、イン前に今まででいちばん悩んで考え抜いた作品だったと思います。
――そういう経験を経ての、ヴェネチア映画祭でマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を受賞された『ヒミズ』だったというわけですね。
『ヒミズ』ではいろいろ刺激的な体験をしましたね。撮影前に、台本1冊分リハーサルをするという過去にやったことのない経験をしました。シーンごとにカットしていくんですけど、それに併せて、ほかのキャストさんがリハーサル部屋を出入りされる光景がスゴかったですね。まだ、舞台はやったことがないので、生まれて初めてイン前に台本1冊覚えましたね。
――受賞した賞に名が付いている名優マルチェロ・マストロヤンニ主演作『ひまわり』もお好きだとか?
この冬、リバイバル上映される際に推薦コメントを書いたぐらい、『ひまわり』は好きですね。だから今回は、マルチェロの名前が付いている賞であること、そして新人賞であること、2度うれしい感じでした。あと、受賞した後に、知り合いから「おめでとう。でも、お前はマルチェロに似てないけどな……」という、おめでとうメールが来ましたよ(笑)。
――好きな俳優としては、フィリップ・シーモア・ホフマンの名が挙げられていますね。
『カポーティ』とか『脳内ニューヨーク』とか、あと『パイレーツ・ロック』も『マグノリア』も好き。あの人がテンパった演技をするときが好きなんですよ。本当にテンパっているような感じがするから。『M:i:III』』の悪役っぷりも、腹が立つほど憎らしいですね。 好きな作品を挙げていくとキリがないんですが、彼のことは純粋に好きなんですよ。自分は、あの人のような役者にはなれないと思うので……だって、フィリップ・シーモア・ホフマンですよ! ほかに好きな俳優はビル・マーレイとかかな。逆にあまり嫌いな俳優はいないんですね。
2011.12.01(木)
text:Hibiki Kurei
photographs:Miki Fukano
hair&make-up&styling:Miyuki Abe