無用な飾りつけより、美味しさで印象に残る料理

紅葉鯛と呼ばれ、脂ののりが抜群の秋の鯛で炊き込みご飯を。

 食いしん坊のあいだでこの数年、名前が出る回数が増えた地域といえば四谷三丁目です。この一帯は、かつて芸者さんが数多く在籍した花街で、荒木町という旧名のほうが食いしん坊には通りがいいかもしれません。花街としては廃れてしまいましたが、いまでも細い路地の奥には、料亭として使われていた建物がいくつもあり、昭和の香りがたっぷり残っています。

独立前から集めた器の数々。

 そんな荒木町の一角にあるのが日本料理店の「津之守坂 よねやま」。店主の米山光郎さんは料亭や蕎麦割烹などで修業し、10年ほど前に独立しました。カウンターとテーブル2つの小体な店で、コース1万円(当時)とは思えないほど美味しいものがお腹いっぱい食べられ、夜遅くはアラカルトで一杯飲める店として評判を呼び、ミシュランガイドでは日本上陸直後から1ツ星を獲得しました。

調理場で熱心に調理する米山さん。主人の手先が見えるのもカウンター席の楽しみ。

 その「よねやま」がこの10月に内装を一新。京都の路地に潜むカウンター割烹のような店に変わったのです。新しいよねやまは広いカウンターにゆったりと5席を配置、4人テーブルを備えた個室もできて、使い勝手がよくなりました。

 もちろん美味しい料理はそのまま、というより、はっきり言ってグレードアップしています。新しくなったよねやまのコンセプトは「贅沢な晩ごはん」。夏はハモ、秋は松茸、冬はフグなど、季節ごとに食べたくなる食材を、無用な飾りつけより、ストレートに美味しさで印象に残るような料理に仕立てるのです。

身が厚く、脂ののった鯖寿司。
お椀代わりのスッポンの小鍋は酒が進む。

2015.12.07(月)
文・撮影=小暮ひろみ