マレー半島とボルネオ島北部にまたがる常夏の国、マレーシア。実はこの国、知る人ぞ知る美食の国なのです。そこでこの連載では、マレーシアの“おいしいごはん”のとりこになった人たちが集う「マレーシアごはんの会」より、おいしいマレーシア情報をお届け。多様な文化が融け合い、食べた人みんなを笑顔にする、とっておきのマレーシアごはんに出会えますよ。

「チャー・クイティオ」を食べずして、マレーシア料理は語れない

 今回紹介するのは、マレーシア料理初心者にぜひ食べて欲しい「チャー・クイティオ」です。

米の麺は、東南アジア一帯で広く食べられているが形状は様々。マレーシアの「チャー・クイティオ」は、7~10ミリ程度の幅広麺を使用。乾麺ではなく生麺で、もっちりとした弾力とつるっとした舌触りが味わえる。

 「チャー」は炒める(中国語)、「クイティオ」とは米の麺のこと。つまり、米の麺を炒めた料理が「チャー・クイティオ」で、独特の麺の食感、香ばしいサンバルソースの風味が特徴です。具は、海老、赤貝、中華ソーセージ、揚げた豚の脂身などバラエティに富んでいて、ボリュームも満点。辛すぎず、それでいて濃厚なうま味があり、老若男女を問わず人気のひと皿なのです。

マレーシアの屋台街を歩いていると、料理人が豪快に麺を炒める姿によく遭遇する。そこが「チャー・クイティオ」の屋台。サンバルソースの香ばしさがあたりに漂い、食欲をそそる。値段は具の豪華さによって異なり、6~8リンギット(170~230円)程度。

 麺を炒めるときに加える調味料は、この連載コラムでもおなじみの、マレーシア料理の核となるサンバルソースです。唐辛子に、玉ねぎと砂糖で甘みを加えたペーストで、辛さのなかに深~いコクがあります。それらを強火で一気に炒め、麺の表面はカリッと香ばしく、最後にとき卵を全体に絡めたらできあがり!

左:「チャー・クイティオ」は中国系のマレーシア料理なので、漢字の看板を探そう。ちなみに料理名を漢字で書くと「炒粿條」。
右:ペナンの有名店「Kafe Heng Fuat」の「チャー・クイティオ」。大きな海老がごろごろ入っているので、値段は11リンギット(約300円)とちょっとお高め。

 さて、マレーシア全土で食べられる「チャー・クイティオ」ですが、発祥の地といわれているのが、マレー半島北西に位置するペナン島。食の宝庫であるペナンの名物料理が、このチャー・クイティオなのです!

2015.10.30(金)
文=古川 音
撮影=古川 音、三浦菜穂子