東大寺は知っているけど、西大寺はどこ?
いにしえの奈良では、東の大寺・東大寺に対し、西の大寺・西大寺が建立されました。壮麗な二基の五重塔が聳え、多くの堂宇が甍を連ねた広大な伽藍であったそうです。今回ご案内するのは、南都七大寺のひとつに数えられる真言律宗総本山西大寺です。
大阪、京都へ通じるターミナル駅である近鉄大和西大寺の駅は有名ですが、その駅名の由来となった西大寺のことはあまり知られていないような印象があります。ときおり、テレビのニュースで大きなお茶碗のお抹茶を大勢で廻し呑みする「大茶盛式」の行事が放送されると、お寺の存在を思い出すくらい。なにより私がその一人でありました。
近鉄大和西大寺駅からほんの3分も歩くと、趣のある土塀が見えてきます。ひっそりとした佇まいの境内に建つお堂はほとんどが江戸期のもので、天平の面影を伝えるのは東塔跡の基壇のみ。
東大寺と並ぶ壮大な伽藍はいつなくなってしまったのでしょうか?
奈良時代の「南都六宗」にはない真言律宗とはいつ生まれたのでしょう?
長い歴史の中で何があったのか、私は長年何も知ろうとしませんでした。
ところが最近になって西大寺の最大の法要である【光明真言土砂加持大法会】(こうみょうしんごんどしゃかじだいほうえ)の声明公演に招かれる機会がありました。
「西大寺には大茶盛しかないと思っていたけれど、こんな面白い法要があるとは知らなかった! これは一から出直さなくては~!」
と、いうことで、その法要をご紹介する前にまずは西大寺の歴史を紐解く1300年の歴史の旅に出てみましょう!
2015.10.02(金)
文・撮影=中田文花