ちょっと寄り道
「古民家を抜け出してスナップ撮影へ!」

歴史民俗資料館の前の道は昔のままの石畳。長い年月かけて踏みしめられた石一つ一つに風情がある。

 古民家撮影の勉強はここまでで終わりにして、せっかく小値賀島にきたのだからぶらぶらと散歩しながらスナップ写真を撮りに行こう!

左:街の裏路地は細く車は通れないため、荷物運搬にはリヤカーを使っている。
右:斑島と小値賀島を結ぶ斑大橋のたもとでは小値賀牛が放牧されていた。

 まず通りを歩くと最初に気付くのは、この島にはコンビニエンスストアが1軒もないこと。細い路地裏には、昼寝する猫たちや洗濯バサミでぶらさげられた自家製干物、そして車が少ないからか、堂々と路地の真ん中に子供用自転車がゴロンと横たわっている。そんなのんびりした時間が流れる島には古き良きものが沢山残っている。

活版印刷「晋弘舎」の活字たち。眺めているだけでも楽しい~!

 その中の一つに活版印刷「晋弘舎」がある。中を覗くと昔ながらのインクの匂いと紙の匂いが懐かしい。ひとつひとつ大切に使われてきた活字たちは、息をひそめて自分の出番を待っているようだ。

野崎島には野生のシカが約400頭以上生息している。シカのお蔭で雑草がない。草刈りシカ!

 また、小値賀島の隣に位置する野崎島は、現在はほぼ無人島になってしまい、野生のシカが住んでいるが、ここには赤レンガで作られた野首天主堂という教会がある。当時の隠れキリシタンの人々の生活や信仰を垣間見ることができるのだ。

左奥のレンガの建物が野首天主堂、手前の建物はかつての小・中学校。今は自然教室など野外活動の場所として使われている。
野首天主堂の中には日本の椿の花をイメージしたようなデザインのステンドグラスが窓にはめられている。欧米諸国の教会とは一味違い温かみを感じるデザイン。
野首天主堂の天井はコウモリ天井と言われ、コウモリが羽を広げたようなデザインになっている。

 小値賀島には、古民家での自炊に飽きたら、普通の人の家に宿泊する民泊というシステムもある。これは、見ず知らずの人の家に泊まって、その人たちの暮らしに入り込み、いろいろなことを体験するというもの。漁師さん宅の場合は、一緒に魚を獲りにいったり魚のさばき方を教えてもらったり。農家では種イモの作り方や地元の野菜料理などを学ぶ。

 このシステムを最初に考えた人はすごいと思う。暮らすように旅するどころか、その家の家族の一員になってしまうような旅なのだからあっぱれである。

 古民家ステイ、野崎島上陸、民泊などの詳細は「おぢかアイランドツーリズム」に問い合わせるとよい。懇切丁寧に対応してくれる。

野崎島の高台から海を望むと海の青さに息をのむ。遠くには名前もわからない島々がたくさん見える。
野崎島の木々はシカが首を伸ばして届く高さに葉はなく、届かないところには葉が残っている。この高さを「ディアーライン」と呼ぶ。ネイチャーガイドの人が教えてくれた。

おぢかアイランドツーリズム
所在地 長崎県北松浦郡小値賀町笛吹郷2791-13 小値賀港ターミナル内
電話番号 0959-56-2646
URL http://www.ojikajima.jp/

2015.07.24(金)
文・撮影=山口規子