世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。
第95回は、ドバイを訪れた大沢さつきさんが、ストイックだと思われがちなイスラム教の断食の意外な現実についてレポートします!
空腹は“ラマダン・セール”の爆買いで満たす
ラマダン月は新月から次の新月まで。今年は6月18日にスタートしたが、こちらちょうど三日月。飲まず食わずの日中の試練に、まだまだ体の慣れないころ。この時期は交通事故も多いとか。イスラムの世界では太陰暦を採用しているので、ラマダン月は毎年11日ずつほど早まり、2016年は6月6日からはじまる。
イスラム教の世界では毎年、ラマダン=第9月の日の出から日没まで、およそ1カ月間のサウム(断食)が行われる。ムスリムに課せられた5つの義務のひとつで、世界中約16億人のイスラム教徒が同じ試練を共有するとても神聖な時期。プチ断食なんぞとは比べものにならない厳しい“行”と思っていたら、実はなにやらお祭り気分なのだそう。日本式にいうと盆と正月が一度に来たような、そんな雰囲気とか。アラブ首長国連邦ドバイのラマダンの様子をのぞきに行った。
空港で出迎えてくれたのが「ラマダン・カリーム」の看板。直訳すると神聖なるラマダンといった意味らしいが、この時期の挨拶で、メリー・クリスマスにニュアンスは近いようだ。
まず空港に着くと、パーティションに隠されたカフェが目に入る。ムスリムでないツーリストは飲食可ということなのだが、断食をしている人たちの目に触れぬようにという配慮。公の場ではタクシーの中でももちろん、飲食のみならず、喫煙もガムを噛むのもNGだ。
観光客はホテルのレストランで食事ができるが、アルコールは日没後(20時~だったり21時~だったり)でないと飲めない。ムスリムは飲酒をしないので、夕食時にビールでプハーッとできずとも構わないのだろうが、灼熱のドバイでこれができないのはツライ。よってホテルの部屋で一杯飲んでから、夕食に出かけるのがコツらしい。
空港のカフェはこんな具合に衝立で覆われている。ホテル内のレストランも外から食事風景が見える店は、同じように目隠しが設えてあった。
ベーカリーの PAULはテイクアウトのみで営業。店内の椅子は一休みのために開放している。
で、どこがお祭り騒ぎなんだいと思いつつ“ラマダン・セール”の恩恵にあずかりにショッピング・モールへ。この時期ドバイは外気温40度アップもザラで、冷房のガンガン効いたモールでのお買いものがデフォルト。市内には大小40ほどのモールがある。
と、爆買いな人たちを発見。両手に抱えきれないほどの紙袋を提げて、まだまだ買うぞという雰囲気。空腹のストレスを買いもので発散させているのもあるし、ラマダン明けにある大きな移動祝祭日イードに向けて服を新調という意味もあるとか。30%オフ、40%オフのお買い得なショッピングを満喫しているように見受けられた。
「モール・オブ・ジ・エミレーツ」のラマダンの飾り付け。欧米のクリスマス感覚なのが伝わってくる。このモールには520店舗以上があり、屋内スキー場も併設されている。
各所で行われているセールは観光客にも魅力的。巨大モールでのショッピングは、目当ての店に直行するか、「ブルーミングデールズ」といった百貨店を目指すのがよさそうだ。
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- 文・撮影=大沢さつき
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