もうじき日没。ようやくゴハンが食べられる!

「モール・オブ・ジ・エミレーツ」に設置された喜捨スペース。食料寄付箱にもけっこう寄付が入っていて、この食料は貧しい人たちのイフタール(断食後の食事)に使われる。

 ムスリムに課せられた大切な義務にはザカート(喜捨)というのもあって、年収から一定額(2.5%)の寄付をする。貧しい人々や困っている人々に、富の分配をするという発想。もっとアピールしたらよいと思う善行のひとつだ。とくにラマダンの時期には、モールやスーパーマーケットにも寄付箱が備えられていて、お金だけでなく食品や家庭の不用品を寄付する人も多い。

モールにあるレストラン。料理をずらりと並べ、日没の合図を待つムスリムの人たち。飲み物も整えて、ただひたすら待つ。

 空が茜に染まり、もうすぐ日没という時間になると、レストランはイフタール(断食後の食事)の準備で忙しくなる。空腹を抱えた客たちが早くも席につきはじめ、料理を注文。5~10分前には、テーブルに並んだ料理を前にジッとときが来るのを待つ。こういうときこそスマホは味方。気を紛らわせようとばかりにスマホをいじる人多数だ。

左:車道で無料配布されている“イフタール・ボックス”。水とデーツ(ナツメヤシ)とカップケーキが入っていて、移動中に断食明けを迎えた人への緊急キットみたいな役をなす。
右:アル・ファルーク・モスク&センターに張られた“ラマダン・テント”。日没が知らされると、いっせいに黙々とガツガツと食事。そりゃあそうです。おなかが空いているなどというレベルではないはずです。

 モスクなどの公共の場や裕福な家の前には“ラマダン・テント”が張られ、貧しい人たちにイフタールを振る舞う光景を見ることもできる。歳末の炊き出し的感覚。互助精神が行き届いている感じだ。

通称アル・ファルーク・モスク&センターは、ミナレット(塔)4本の格式あるモスク。世界遺産であるイスタンブールのブルーモスク(スルタン・アフメト・モスク)を模したつくり。

 イフタールはまず、空腹の胃にやさしい栄養価の高いデーツを食べ、タマリンドや杏のジュースでじょじょに満たしていく。その後ゆっくりさまざまな料理を食べて、家族団欒を楽しむとか。

左:大富豪一族が建てたこのモスクは、イスラム文化やアラブの遺産を広く知らしめるという理念をもつ。ブルーモスクだけでなく、スペインのアルハンブラ宮殿からも着想を得た内装は、モロッコから職人を招聘して本格的につくらせた。
右:イスラム文化を広めるべく、弾丸トークでUAEの成り立ちからラマダンに関することまでを説明してくれる。写真&ビデオ撮影可という希少なモスクだが、服装には厳しく、女性は全員、体をすっぽり覆うアバヤという民族衣装を着なくてはいけない(きれいにクリーニングされたものを貸してくれる)。

Al Farooq Omar Bin Al Khattab Mosque and Centre
(アル・ファルーク・モスク&センター)

所在地 Al Safa 1, Dubai, UAE
電話 +971-4-394-4448
URL http://alfarooqcentre.com/

2015.07.21(火)
文・撮影=大沢さつき