CREA WEBの好評連載コラム「世界極楽ビーチ百景」で海外の至福ビーチ事情をレポートし続けているビーチライター・古関千恵子さんが、特別篇として国内の厳選ビーチをおすすめします。三浦、伊豆、房総といった首都圏からのアクセスに優れた場所から、沖縄の離島や小笠原といったスペシャルな南国まで、日本が誇る10の絶品ビーチをご紹介!

#002 南大東島(沖縄県)

沖縄と大和がミックスした南大東島文化を舌で味わう

幕(はぐ)に囲まれた盆地のような地形。ちなみに幕は八丈島の方言だそう。

 夏の天気予報で台風の接近と共に、耳にする南大東島。深海から環礁が数度にわたり隆起して誕生した島だそうで、陸地は幕(はぐ)と呼ばれる天然の塀がちょうど環礁のリーフのようにぐるりと立ちあがっています。その幕の内側で、島の暮らしが営まれています。

 断崖に囲まれ、ビーチがない南大東島。それでも東には塩屋プール、西には海軍棒プールという岩礁や岩場を削った潮だまりがあり、そこで泳ぐことはできます。

しばらく漁に出ない漁船をクレーンで陸揚げする風景。定期船で南大東島へ訪れる客は、ゴンドラに乗り、クレーンで吊り上げられて上陸するのが名物になっています。

 かつて無人島だった南大東島に八丈島から人々が移り住んだのは、明治時代の頃。八丈島から伝わる文化や風習が多く、沖縄ではあるけれど、大和でもある不思議なカルチャーが育まれています。たとえば、大東神社祭では神輿が担がれる一方で、エイサーも行われます。沖縄相撲もあれば、江戸相撲もあります。

 そんな独自のカルチャーに触れるには、食が美味しく、手っ取り早い!

見た目も食感もうどんのような大東そば。(C)南大東村観光協会

 まずは“大東そば”! 少しちぢれた太麺はもっちりと、うどんに似た歯ごたえ。小麦に海水を煮詰めた塩と、ガジュマルなどの薪の灰汁、島の水を加えて打ったそばは、ほのかな塩味と甘みがうまい!

小笠原の島寿司と似ている大東寿司。島寿司が練りカラシを使うのに対し、大東寿司はわさびを使っています。(C)南大東村観光協会

 “大東寿司”は、八丈島にルーツをもつ、いわゆる“漬け”。しょうゆとみりんに漬けたマグロやサワラを、この島で作られた塩・酢などで味を整えたしゃりに載せ、握る。ひとつのサイズがおいなりさんくらいに大きく、食べ応え満点。それぞれの家に家庭の味があり、冠婚葬祭には欠かせない存在だそうです。

2015.07.15(水)
文・撮影=古関千恵子