暑さにさらされ、寒さを越え、島のラム酒が生まれる

ラム酒の原料となるサトウキビを1本ずつ、圧搾機に投入。1トンのサトウキビを搾るのに、5時間はかかるのだそう。

 それまで泡盛さえ造られていなかった伊江島で、初めての島酒造りプロジェクトが始動したのは、2009年のこと。沖縄本島で泡盛の杜氏として活躍していた知念寿人さんが、「故郷の伊江島で、特産品作りを」と一念発起。島に戻り、試行錯誤のすえ、2011年にようやく、念願の島産ラム酒発売にこぎつけた。ラム酒工場は、かつてバイオエタノール(サトウキビを原料とする燃料)の実験工場として使われていた建物を再利用している。

造り手は、泡盛職人から一転、島産のラム酒造りに燃えるMr.ラム酒、知念寿人氏。立ち上げエピソードから17世紀の三角貿易にいたるまで、ラム酒がらみの知識が豊富。

 商品は、樽貯蔵とステンレス貯蔵の2種類。ステンレスタンクで貯蔵したものが「イエラム サンタマリア クリスタル」で、オーク樽で熟成したものが、「イエラム サンタマリア ゴールド」だ。

 ラム酒というと、海抜2000メートル以上の涼しい高地で熟成させるグアテマラの銘酒ロンサカパが有名であるように、温度管理が難しそうなイメージもある。だが、ここではあえて、貯蔵時に厳密な温度管理はしていない。「ラム酒には、その土地の風土がストレートに出ます。暑さにさらし、寒さを越えて、島らしい酒ができるんです」と、知念さん。

ススキのようなサトウキビの花。バックに聳えるのは、島のシンボル、城山。

 自然な状態で熟成したラム酒は、サトウキビを思わせる、なんとも芳醇な香り。無色透明の「クリスタル」はスッキリとしていてモヒートにぴったりだし、オーク樽で熟成された琥珀色の「ゴールド」は、オンザロックがおいしい!

 豊かなサトウキビ畑と美しい島の風景を思い出す伊江島の地酒は、島旅のお土産にもぴったりだ。

伊江島蒸留所
電話番号 0980-49-2885
URL http://www.ierum.jp/

2015.06.16(火)
文・撮影=芹澤和美