ドクターコスメでも薬用コスメでもない、クスリ美容
中:レチノール誘導体や尿素配合で肌の代謝を促す。フェルゼア レチノバイタル クリーム(第3類医薬品) 30g 1,100円/資生堂薬品
右:尿素の角質軟化作用で二の腕のブツブツをケア。メンソレータム ザラプロ(第3類医薬品) 35g 1,200円/ロート製薬
化粧品は“クスリ”ではない……よくそういうフレーズが使われる。クスリではないから“治療”はできないという意味。でも逆にクスリと違って長く長く使い続けられるし、予防美容もできる。副作用もないから自在に使いこなせる……という意味でもあったりする。
しかし今、逆に化粧品ではない“クスリ”の美容がひとつのジャンルとして確立しつつあるのだ。いやこれは、今に始まったことじゃない。“クスリ美容”は昔からあったものの正直“地味な存在”で、美容界で日の目を見ることはほとんどなかった。
逆を言えば、メディカルスキンケアとして脚光を浴びたのは、むしろ“ドクターコスメ”のジャンルだったわけだが、これもあくまで化粧品。元々は敏感な肌などにも使える低刺激をモットーにしていて、治す目的のものではなかったと言える。
じゃあ“薬用コスメ”とも呼ばれる“医薬部外品”は? これも“クスリ”ではなく、特定のトラブルに効果があると国が公に認めた“薬用成分”を配合した化粧品にすぎず、たとえば、“美白化粧品”を謳っているものはすべてが日やけによるシミ・ソバカスに効果があると公に認められた医薬部外品。やっぱり化粧品には違いないのだ。
でも“クスリ美容”はあくまでクスリ。逆に“化粧品ではできない美容をやってのけること”を訴え始めたのだ。きっかけとなったのは、資生堂がクスリとして「イハダ」ブランドを発表したこと。これは100%クスリだけれど、化粧品ともわたり合える美肌効果を持ったクスリ。それもそのはず、資生堂の化粧品技術を応用して、今までは安定配合が難しかった“非ステロイド性抗炎症成分”のウフェナマートを初めて配合、まるで化粧品のようなエッセンスやクリームの開発に成功したのだ。
2015.05.31(日)
文=齋藤 薫
撮影=吉澤康夫