スキンケアならぬ“スキンキュア”の復権
右:抗炎症成分が肌内部の炎症にアプローチ。なめらかな使い心地で生理前の顔湿疹のケアにもおすすめ。イハダ プリスクリードAA(第2類医薬品)30g 4,500円/資生堂薬品
言うまでもなく、資生堂には元々、資生堂薬品という医薬品部門があり、初めてクスリでの美容を手がけたのも80年前の資生堂。むしろその後、化粧品が思い切り進化したことで、陰に隠れた形になっていた“クスリ美容”だが、化粧品が今や行くところまで行って、ある意味の完成を見せつつあるからこそ、逆に化粧品がいかに進化してもどうしてもできないことをクスリならやってのけられるということで、クスリ美容の逆襲が始まったのである。
初めてクスリの美容クリームを作った資生堂が、今回もクスリ美容の復権へ自ら旗揚げした形だが、それも化粧品とクスリ、両方を知っているからできたこと。イハダはニキビやカサつき、肌あれ、かぶれなど、化粧品では治らないトラブルを“治す”ことから、スキンケアではなく“スキンキュア”を名のることになる。
じつはこのクスリ美容が俄然注目を集めたのは、未解決なのに誰も本気で取り組んでこなかった“二の腕のブツブツ問題”を本気で治療してくれるクスリが現れたから。多くの人が悩んでいた二の腕のブツブツは、毛穴の内側に古い角質がたまるのが原因。だから角質をほぐし炎症を抑え、血行を高めて代謝を促すことが同時に行われなければ治らない。それを尿素を中心にやってのけるフェルゼアやザラプロが大ヒット。ハッキリ言って、ボディケアをせっせと続けるより、早いし安いし確実と、私たちが気づいてしまったことも、クスリ美容の逆襲に一役買ったのだ。そうしたクスリがテクスチャー的にも化粧品と変わりないレベルとなってきているのもそこに弾みをつけた。
そもそも乾燥によるかゆみを防ぐへパソフトや炎症を鎮めるHPローションなどのクスリ美容は、“治す保湿”としてすでにひとつの主流となっている。クスリが本気になったら、化粧品には負けない。私たちにとってそれはもちろん大歓迎の展開だが……。
齋藤薫 Kaoru Saito
女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイストに。女性誌において多数のエッセイ連載を持つほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『人を幸せにする美人のつくり方』(講談社)、『大人になるほど愛される女は、こう生きる』(講談社)、『Theコンプレックス』(中央公論新社)、『なぜ、A型がいちばん美人なのか?』(マガジンハウス)など、著書多数。
Column
齋藤 薫 “風の時代”の美容学
美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍する、美容ジャーナリスト・齋藤薫が「今月注目する“アイテム”と“ブランド”」。
2015.05.31(日)
文=齋藤 薫
撮影=吉澤康夫