アメリカの中西部、おいしい朝ごはんを巡る旅。イリノイ州の次は、酪農・農業で知られるウィスコンシン州へ。素材のよさが引き立つ朝ごはんは、朝から食べ過ぎてしまうおいしさです。

農家と手を携えて頑張る朝食&ブランチ専門店

725万ドルをかけて1917年に完成したウィスコンシン州会議事堂。ドームの頂上には、アナグマがのった兜をかぶった金箔張りの像が立ち、その立派さには目を見張る。

 ウィスコンシン州は、ミシガン湖とスペリオル湖、そしてミシシッピ川と水に恵まれ、酪農業で有名な州だ。州都マディソンにある州会議事堂の立派な建物は、国定歴史建造物に指定されていて、あのアメリカ合衆国議会議事堂と肩を並べる(3フィートだけ低いらしい)。マディソンは、街中も緑が豊かだ。

元は消防署だった「エンジン・カンパニーNo.3」の建物はツタがからまり美しい。レストランは2014年の夏にオープンしたばかりだが、早くも地元で人気。

 そんなウィスコンシン州最大の都市ミルウォーキーで、「エンジン・カンパニーNo.3」を訪れた。この話題のレストランは、1904年に建てられたというレンガ造りの消防署の建物を改装し、朝食とブランチを専門に提供している。

オーナーシェフのピーター・サンドローニさん。他にタパス・レストランも経営している。

 人気の秘密は、地元農家からの新鮮な素材とひとひねりあるメニューの数々。シェフのピーター・サンドローニさんは、大学で政治学を修めてからシカゴにある著名な料理学校であるケンドール・カレッジに行ってシェフになったという経歴の持ち主。

 個々のメンバーシップに基づいたRSA (Restaurant Supported Agriculture )という組織を立ち上げ、シェフたちが地元農家に買い出しに行く仕組みを作った一人なのだ。本当に作り手の顔が見えるメニューは、仕入れによって週ごとに調整しているという。

卵の黄身がしっかり濃くておいしい。卵は「ジェフ・リーンとスリー・ブラザーズ農場から」とメニューにも明記。

 単に地元というだけではなく、卵なら放し飼い、遺伝子組み換えをしないなどサステイナブルな農業をサポートしている。季節による寒暖の差が激しいミルウォーキーでは、自然な農法では夏の野菜は冬には手に入らない。そこで、例えばトマトならピュレーに、キュウリならピクルスに、ベリーはジャムにするというように、新鮮な時に保存して使えるように工夫しているという。

シリアルに入っている新鮮なベリーもフレンチトーストにかけられたベリーのジャムもナチュラルで味が濃い。

 そんなこだわりの朝ごはんメニューは、塩味の濃いアメリカでは珍しく、素材感が味のなかで立っている。“アルゼンチン・ステーキ&エッグ・プランテン”は、プランテンと呼ばれる料理用のバナナのピュレーのほのかな甘みと軽く塩胡椒しただけの薄切りのステーキの味がマッチした一品。パワフルながら胃もたれしない、朝からでも食べられるおいしいステーキだった。

季節メニューだが、プランテンのマッシュと卵の上に薄切りのステーキがのったアルゼンチン・ステーキが朝から出る。

Engine Company No.3(エンジン・カンパニーNo.3)
所在地 217 W. National Ave., Milwaukee, WI 53204
電話番号 +1-414-226-5695
URL  http://www.enginecompany3.com/

2015.03.12(木)
文・撮影=小野アムスデン道子