レベルは上がっているのに、値段は上がっていない

広いワイン畑とともに、宿泊できる施設を持つシャトーも。外国人客に大人気で予約も困難なほど。

 カジュアルワイン生産ゾーンでありながらも、そこはやはりボルドーの一部。ユニークな土壌や樹齢の高い葡萄の木、歴史の長いシャトー(ワイン醸造所)や、最新技術を持つシャトーもあります。やる気のある若手醸造家も出ていて、おいしいワインを生みだす要素がいくつも潜んでいる! 実際に訪れて出会ったワイン生産者たちは、口を揃えて「ワインのレベルは確実に上がっているのに、値段は上がっていない」と言います。

アットホームなシャトーでは、マダムの料理やかわいい部屋が用意されているところもある。

「AOCボルドー/ボルドー シュペリュール」のワインは、日本やその他の国への輸出も多く、地元の人はもちろん、世界中で飲まれています。そして、アントル ドゥ メールにあるシャトーの中には、宿泊できる素敵なスペースを持つところも。そんなところは、外国人の予約で何カ月も先までうまっていたりして、驚かされます。

 つまり、「AOCボルドー/ボルドー シュペリュール」は、コストパフォーマンスのいいフランスワインを探すなら絶対に外せないAOCであり、生産地を訪れれば、美しい葡萄畑とシャトー、流れる河を望める魅力的なエリアというわけです。

 ワインに興味がある人なら、目を向けて損がないこのAOCですが、「AOCボルドー/ボルドー シュペリュール」の生産組合に加入している人はなんと約5500人。その中から訪れるべきシャトーや、買いたいワインを見つけるのは、いくら鼻がきいても難しそう。

左:ボルドー市内から車で1~2時間ほど行けば、アルカション湾でのクルージングも楽しめる。
右:クルージングしながら、湾でとれた牡蠣をはじめ、魚介をたっぷり食べることも。シャトー巡りに加えたいお楽しみだ。

 次回から、実際に訪れた中からお勧めしたいシャトーとワイン、プラスアルファのお楽しみを紹介していきたいと思います。シャトーで食事、シャトーに宿泊。一度は体験したいそんな夢をかなえる、魅力的なAOCボルドーの世界が待っています。

浅妻千映子(あさづまちえこ)
聖心女子大卒。建設会社でOLのあと、フリーライターへ。雑誌等で食を中心とした記事を書いている。料理研究家としての活動も。著書に『パティシエ世界一』(光文社新書)、『江戸前「握り」』(光文社新書)、レシピ本『浅妻千映子キッチン』(ぴあ)などがある。レストランガイド『東京最高のレストラン』(ぴあ)の採点者の一人。マンガ『キングスウヰーツ』(全5巻・小学館)の原案担当。JSA認定ワインエキスパート。All About「お酒と楽しむレシピ」のガイド。ワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」のクッキングクラス講師。

2014.09.25(木)
文・撮影=浅妻千映子