ハリス氏の影響力はかなり下がった
――上院・下院で勝利したものの、2年後の大統領選に向けて、民主党側の組織的な課題が顕在化したと言えますね。
そうですね。2028年の大統領選をどういう姿勢で戦うか。今回の中間選挙を通じて党がどう変わるかによって、2年後に出てくる名前もずいぶん変わってくるでしょう。
――カマラ・ハリス氏など、これまで民主党の中央にいた人たちの影響力は、この結果を受けて下がってしまうのでしょうか。
かなり下がると思います。これまではハリス氏やギャビン・ニューサム氏の名前が上がっていましたが、彼らは基本的にロビー団体や大企業との結びつきがあります。しかし、「企業献金もロビー団体からの支援も受けずに勝った」候補が台頭してくると、「あなたは民主党を“労働者の党”として説得できるのか」と問われたときに反論しにくい。2028年の大統領選の候補者議論の根底が変わってくるでしょう。
加えて、テキサスのタラリコ氏やカンザスのハミルトン氏のように、神学生や牧師としての経験など宗教的倫理をもって保守層にアプローチできる候補が現れました。これまで民主党は、リベラルな党としてどう保守層に訴えるか、どの面で妥協するか、というレベルの話に終始していた。しかし、妥協しなくてもより本質的に保守層に届く言葉や政策を持つ人物が出てくると、「保守に寄せられるリベラル」といった立ち位置の候補は魅力が薄れてくるかもしれません。今回の選挙で個性豊かな人たちが躍進したので、次の顔が誰になるのか面白くなりそうです。
私たちはトランプ大統領の台頭以降、特に福音派が政治権力と結びつく一面を見てきました。しかしそれは一部の姿です。民主党で、異なる信仰と政治の結びつけ方をする政治家が台頭してくると、私たちの宗教を見る目も変わってくるでしょう。
――この結果、上院下院ともに民主党が過半数となると、トランプ政権は文字通りレームダック化します。この先の2年間、どういう手の打ち方をしてくるでしょうか。
とはいえ、すでに議会が全く機能していない政治が行われていることも事実です。議会の多数派が民主党に代わり、イラン戦争や関税政策をやめさせようとしても、トランプ大統領には法律に署名しない拒否権がありますし、これまで通り議会を無視した政治を続けていく懸念は強い。
ただ、制約がかけられないわけではありません。一番大きいのは、外交委員会や軍事委員会などの委員長職を民主党が握ることです。これにより、何をどう調査するかを決定できます。例えばイラン戦争はなぜ始まったのか? 開戦過程でイスラエルの影響力があったのでは? という疑惑は大きな問題です。ほかにも、原油価格の変動を利用したインサイダー取引疑惑などもあります。こうした疑惑を、証人を呼んだり資料を提出させたりして、しっかり調査することができます。
"弾劾罷免”という話も出てきますが、そのためには下院の過半数、上院の出席議員の3分の2の賛成が必要で、とりわけ上院のハードルは高い。しかし、弾劾罷免までいかなくても、トランプ政権周りには調査が必要なことがたくさんある。大統領になってから個人資産が増えているのはなぜか。自身の名前を冠した暗号資産コインの関係者をホワイトハウスに招くのは、大統領職を利用したビジネスではないか。クシュナー氏らファミリービジネスの問題もあります。国民の9割が「今の政府は腐敗している」と回答している状況ですから、まずはこの不透明な政策を調査し、何が起きたかを明らかにすること自体が、民主主義の観点からとても大事です。
