トランプ大統領の残り2年の政権運営を大きく左右する、アメリカ中間選挙。開票作業が11月3日夜(日本時間4日朝)から始まり、民主党が上院・下院ともに過半数を奪還した。

 国際政治学者の三牧聖子氏に、今回の中間選挙と今後のトランプ政権の行方について伺った(発言は11月4日時点のものです)。


保守層にもアプローチした候補が勝利

――トランプ大統領の残り2年を左右する中間選挙の開票が、日本時間の11月4日午前8時頃から始まりました。かなり早い段階で上院下院ともに民主党が過半数を奪還するという見通しになりました。これほど早く決まったのは驚きでした。

 そうですね。ただ、もともと世論調査では民主党支持が強く出ていましたし、投票意欲も「必ず投票しに行く」という民主党支持者が多かった。とくに最近は、トランプ大統領の看板政策である関税、そして一番大きいのはイラン戦争、さらに移民政策に関しても、不支持が支持を大きく上回る状況になっていました。

 今回の結果は、投票用紙に名前が載っていないトランプ大統領自身への審判というよりも、トランプ政権の関税やイラン戦争などを全く止めてこなかった、議会としてかけるべき歯止めを全くかけていない共和党多数の議会への不信任ということが、大きな背景として存在します。

――最も注目された州の一つがテキサス。かなり早い段階で民主党のジェームズ・タラリコ氏の当選確実が出ました。

 テキサス州で民主党候補が上院選に勝利するのは、1988年以来38年ぶり。非常に「赤い州」であるだけでなく、イーロン・マスク氏のテスラやスペースXの拠点があります。マスク氏は一民間人でありながらトランプ政権に深く入り込み、政府効率化省のトップとして予算カットや個人データの活用などを行ってきました。今回の選挙では、アメリカ政治史上最大規模の約700億円を投じ、そのうち半分ほどがパクストン氏を支持するためにテキサス州に投じられました。資金面ではパクストン氏が優位でしたが、蓋を開ければタラリコ氏が相当な勝利を収めました。

 献金を見ると、タラリコ氏は小口献金を中心に個人から集めていました。今のアメリカ人たちは、市民がこれだけ困っているのに、マスク氏のように政治権力と結びついたごく一部の人だけが得をしていることに怒っている。テキサス州は、まさにその構図が見えやすい選挙になったわけです。

――タラリコ氏とは改めてどういう人物なのでしょうか。彼が支持を集めた理由を教えてください。

 タラリコ氏そのものが、「テキサスで勝てるのはこういう人なのだな」と感じさせる人物でもあります。テキサスのような保守的な州で勝とうとすれば、普通は自分も保守的な面を見せたり、中絶問題などにはあまり触れないようにしたりと、保守化するものです。

 しかしタラリコ氏は妥協することなく、ジェンダーや多様性の問題に関してはリベラルな姿勢を貫いた。民主党の候補がトランスジェンダーの問題に触れると、共和党から「混乱をもたらそうとしている」と攻撃されるため、多くの候補は語りたがりません。しかしタラリコ氏は、そうした論争的な問題についても逃げずにしっかり答えていた。リベラルな姿勢を犠牲にせず、しかし人々の最大の争点は格差や暮らしの問題であることを前面に押し出しました。

 その押し出し方も特徴的です。彼は非常に敬虔なキリスト教徒で、神学を学んでいた経験もあります。「あなたの周りの人が貧困で困っていたら助けますよね」と、キリスト教の信仰を大切にしながら、その言葉で貧困救済や医療問題、移民への寛容を説いたのです。これは保守層にも一定程度届く言葉だったと思います。

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