冗談半分で「ケーキ屋さんをやってみたら?」
取材をしている間にも、葉山のご近所さんや、海岸に行くお客さんがぶらりと立ち寄ります。朝10時に開店し、早い時には14時には売り切れてしまうこともあるそう。海岸で砂浴をしに行くというお客さんは、ウェルシュケーキとレモンドリズルケーキ、アイスコーヒーを注文していました。
ここまでの人気店がどうやって生まれたのか。息子の朋さんが語ってくれました。
「もともと母は20代のときに来日し、関西で英語教師として働いていました。しばらくして、日本語教師をしていた父と知り合い結婚。僕が物心ついた頃には、母は教師を辞めて主婦をしていた。京都や滋賀などで暮らしましたが、僕が社会人になり上京。東京の会社に勤めながら、住み心地の良い葉山に移住しました。その後、両親も年を取ってきたので、7,8年前ぐらいに『一緒に住もう』と声をかけ、葉山に来てもらったんです」
朋さんが小さいころから、お菓子作りが趣味だったという母・ジュリーさん。今年一念発起してお店をオープンした契機には、夫の他界がありました。
「葉山に移って5年。長年住んだ関西を離れ、まだ葉山に慣れないときに父が病気で亡くなりました。このまま母が社会との接点を失ってしまうことを心配して、冗談半分で『ケーキ屋さんをやってみたら?』と言ってみたんです。その時は『嫌だ』と突っぱねられたんですが、今年の1月半ばに母のほうから『ケーキ屋さん、やろうかな』と言い始めて。葉山の友人に相談したら、曜日ごとに借りることができる店舗を教えてもらいました。食品衛生責任者の資格を取るなど大変な手続きはありましたが、店舗からは二つ返事で許可をもらえたり、友人が看板を作ってくれたりと、葉山の素敵なコミュニティのおかげでトントン拍子に進んだ。母が『やろうかな』と言ってから、わずか半月後の2月1日にオープンしたのです」
接客も担う看板娘こと、ジュリーさんにも話を聞きました。
「開店した2月当初はお客さんも来ないし、寒いしで、本当に大変でしたよ(笑)。でもお店を開いて約5カ月、だんだん面白くなってきたね。やっぱり葉山の人は優しい。お菓子を買いながら気さくに話しかけてくれるんです」
ウェールズ出身のおばあちゃまと、葉山のあたたかなコミュニティが生んだ素朴なイギリス菓子。真夏の葉山のビーチで、とっておきのスイーツをぜひ楽しんでください。
Nana's(ナナズ)
所在地 神奈川県三浦郡葉山町下山口1933
定休日 月~金曜
営業時間 土・日曜 10:00~16:00
https://nanas-hayama.stores.jp/
