キリスト教文化の南イタリア料理とゲルマン的北イタリア料理
思えば、日本人にとって、いまやイタリア料理=南イタリア料理になりつつあるのではないだろうか? オリーブオイルの軽さに慣れてしまっているような。もちろんバターや生クリームを使う料理もたくさんあるけれど、そうとう抑えて使っている気がする。北イタリアからちょっと南下して、マルケ州のウルビーノ。ご当地名産カルトチェートのオリーブオイルを使った料理に、正直、ちょっとホッとしたのだった。
あたりまえのことながら、北と南では気候も違えば、生産される食材も違う。地域の独自性の強いイタリアには、100の都市と1000の鐘楼があるように、100の料理と1000のレシピがあるといわれる。食文化の背景も大きく違うのだ。
なんでも中世の初期、ギリシアをスタンダードとするローマは、小麦とワインとオリーブの文化なのだという。これらが、当時最新流行のキリスト教と結びついて、パンとワインは聖体の秘蹟に、オリーブオイルは終末の秘蹟を授けるのに使われるようになった。これが南イタリア料理全般の基本だ。
かたや森に生きる北のゲルマン系民族は、狩猟や牧畜によって食料を得ていたわけで、肉と乳、バター、そしてビールの文化なのだそうだ。北イタリアのロンゴバルド王国はゲルマンな人たちなわけで、南と北、2つの大きな食文化が存在するということなのでした。
食文化の歴史を遡ると、ほんとに深い。ただ、ちょっと面白いと思ったのは、南を代表するシェフのジェンナーロ・エスポジートが見事な恰幅なのに対し、北代表のマッシモ・ボットゥーラはスレンダー。これも元々の民族の違いということなのだろうけれど、食文化のヘルシーさと体格は、あんまり関係ないのかしらね。
右:南イタリア代表シェフ、トッレ・デル・サラチーノのジェンナーロ・エスポジート。
大沢さつき(おおさわ さつき)
大好きなホテル:LAPA PALACE@リスボン
大好きなレストラン:TORRE DEL SARACINO@ソレント
感動した旅:フィリピンのパラワン島ボートダイビング、ボツワナのサファリクルーズ、ムーティ指揮カラヤン没後10周年追悼ヴェルディ「レクイエム」@ウィーン楽友協会
今行きたい場所:マチュピチュ
Column
トラベルライターの旅のデジカメ虫干しノート
大都会から秘境まで、世界中を旅してきた女性トラベルライターたちが、デジカメのメモリーの奥に眠らせたまま未公開だった小ネタをお蔵出し。地球は驚きと笑いに満ちている!
2014.08.19(火)
文・撮影=大沢さつき