阪急神戸線王子公園駅は、ホームの待合室のガラス窓に大きなパンダの絵が描かれており、駅に降り立つだけでウキウキ楽しくなってしまいます。駅近くの神戸市立王子動物園にはジャイアントパンダのタンタンがいるのです。屋外のデッキで木にもたれてのんびりと好物の笹を食べている姿の愛らしいこと。動物園には、ジャイアントパンダだけでなくレッサーパンダやコアラもいて見所満載。神戸っ子にとっては、小さい頃から親しんだ懐かしい動物園でもあります。

皮はパリッと、中はふんわりの「ビッタラアーッパ」(玉子入り)300円。

 王子公園駅すぐにある、スリランカカレーの店『カラピンチャ』は、2013年12月20日にオープン。今回はこのお店の、珍しいスリランカのおやつをご紹介しましょう。

「アーッパあります」の立て看板に足を止める人も。

 近年、大阪や神戸にもスリランカ料理や南インド料理のお店ができて、スリランカカレーを食べたことがある人も増えてきました。「店で出しているのは、カレーと惣菜数種類を盛り合わせたプレート。スリランカに行ったらどこにでもあるスタイルです」とオーナーシェフの濱田祐介さんはにっこり。1皿に盛ったおかずやカレーを少しずつ混ぜながら好きなように食べるのがスリランカ流なのだそう。色々な野菜を使った惣菜は日替りで、たとえば、揚げナスの和え物や菊菜とほうれん草のさっと炒めなど。それらに定番のココナッツのふりかけ、揚げせんべい、漬物・アッチャールと豆のカレー、チキンかエビのカレーをあれこれ混ぜながら食べるのです。色々な味わいとスパイスが口の中いっぱいに広がって、何とも幸せな気分。

カラピンチャとは、スリランカカレーに欠かせないスパイスの名前。英語でいうとカレーリーフ。
オーナーシェフの濱田祐介さん。

 濱田さんは、カレーが好きで2004年に初めてスリランカに旅して以来、スリランカにどっぷりはまってしまったと言います。以来、毎年のようにスリランカに行っては、レストランで働いたり、友人の家でお母さんの料理を習ったり。そんなふうに料理修行を繰り返す中で知って、ぜひ作りたいと思ったのが、「アーッパ」でした。

「アーッパ」とは、米粉をココナッツミルクで溶いて発酵させた生地を、専用の鍋で焼いた、いわば、スリランカのクレープ。「本来は家庭の朝食で食べられていたものですが、今は屋台フード。レストランの店先や屋台にアーッパを焼く鍋が6台くらい並んでいて、職人が休む間もなく次々に焼き、焼き上がりをどんどん積み上げていくんですが、それが、あっというまに売れていく。とってもおいしいんですよ、これが。どうしてもアーッパを自分の店でやりたくて、現地で職人に弟子入りしたんです」と濱田さん。ちゃんと焼けるようになるまで、2ヶ月もかかったといいます。生地づくりも、なかなか難しいのだそう。専用のアルミ製の鍋とココナッツの棒も現地で調達。日本では珍しいアーッパが食べられる店と知り、スリランカ人がわざわざ遠くから食べにくるのだとか。

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2014.07.27(日)
文・撮影=そおだよおこ