パク・チャヌク監督の最新作『しあわせな選択』は、AI時代の雇用不安という現代的な背景のなかで、人が守りたいもののためにどこまで踏み込んでしまうのかを描き出します。主人公マンスを演じたイ・ビョンホンさんに、監督との再タッグ、そして幸せについての考えを聞きました。

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俳優以外の職業に就いている自分を想像したことはない

――イ・ビョンホンさんが演じたマンスは、製紙会社を解雇されたあとも再び製紙会社に再就職することにこだわり続けます。イ・ビョンホンさんは、俳優以外の人生を想像したことがありますか?

 僕自身も、急に別の職業を探せと言われたら困ってしまうと思います。成人してからずっと俳優をやっているので、同じ業種に再就職したいマンスの気持ちは痛いほどよくわかります。きっと僕も彼と同じように途方にくれてしまうはず。だからこそ、脚本にのめり込むように読みました。

――マンスは、家族や自分の幸せを過激なまでに守ろうとします。イ・ビョンホンさんが今、一番守りたいものを聞かれたらなんと答えますか?

 僕もマンスと同じで、家族だと思います。名誉とか経済的なものなど、人によって守りたいものは実に様々だと思いますが、やっぱり家族が一番重要なんじゃないでしょうか。それはこの物語に出合う前からずっと変わらずに思っていることです。

――本作の原題は『仕方ない』ですが、邦題は『しあわせな選択』です。幸せとはどんな状態だと思いますか?

 守りたいものと同じように、幸せの形も人それぞれですよね。日々の暮らしの中の小さなことに幸せを感じる人もいますし、ビジネスの成功や常に高みを目指すことに幸せを感じる人もいる。どちらが正しいとかはありませんが、僕はささいなことに喜びや幸せを感じるタイプですし、そうであり続けようと努力をしています。小さな幸せに鈍感になってしまうと、気づかないままどんどん幸せを逃しながら生きてしまうような気がするんです。人は、幸せになることを目標に生きている部分もあると思いますから。

――そうですね。日々小さなことに喜びを感じながら生きていく努力をすれば、鈍感にならずにいられそうです。最近感じた小さな幸せを教えてください。

 昨日の夜に日本に着いたのですが、ルームサービスで食べたカレーがおいしかったことですね。日本のカレーって独特で大好きなんです。日本式のカレーは、韓国やアメリカなど他の国ではあまり見かけないので、探すのが大変で。だから食べられて嬉しかったです。

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