「私みたいなシンガーソングライターはごまんといる」

――アンジェラ・アキさんと言えばピアノの弾き語りのイメージが強いですが、ピアノを始めたのはいつ頃からですか?

 ピアノは小さな頃からやってたんです。当時住んでいた場所は、テレビは二つのチャンネルしか放送していなかったんですね。山に囲まれているから全然電波が入ってこない(笑)。

 だからかテレビではよく演歌が流れていたんですが、初めて聴いた曲でも次のコードが何なのかもう想定できていた記憶があります。次の展開を当てるゲームをプレイしているかのように音楽を聴いていました。

――そこからシンガーソングライターを志したきっかけは?

 ジョージ・ワシントン大学に進学した一年生の頃、あるライブを見に行った時に「私は音楽をやるために生まれてきたんだ」という使命感みたいなものを感じたんです。そのアーティストが歌っているのを見て、心が揺れ動くものがあったんですよね。

 ただ、「やっぱり私には音楽だ」と思って、親に歌手になりたいと相談したら「ナンセンスだ! ちゃんと勉強して大学を卒業しなさい」って言われちゃって……。今となってはすごく感謝をしているんですが、うちの両親ってすごく厳しくて、学費は出してはくれましたがお小遣いや家賃はくれないし、教科書も自分で買えって言うタイプで。

 なので、大学生の間はバイトして貯めたお金で楽器を買ったり、ライブをしたりしてました。大きな夢を抱えながら、ワシントンD.Cの中でも治安の悪い地区で歌ってましたよ。

――その頃から迷うことなく、音楽への道を歩み始めたんですね。

 いやいや。迷いはめっちゃありましたよ。歌手の絢香とはデビューしたタイミングが一緒で、今も仲良しなんですが、彼女みたいに唯一無二の声を持っていたら迷いなんて持たなかったと思うんです。彼女にも「あんたみたいに歌がうまかったら、私の人生変わっとったわ!」って言ってるくらい。

 私みたいなシンガーソングライターはごまんといたし、自分が特別な才能を持っているなんて思えなかった。親も音楽活動に否定的だったので、このまま続けていいのだろうかという葛藤は常にありました。なので、大学を卒業してから、一度アメリカで就職してるんですよ。

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