トラウマ治療のプロセスと向き合う中で生まれた、アンジェラ・アキさんの約14年ぶりとなるオリジナルアルバム『SHADOW WORK』。同作は、幼少期から『手紙 ~拝啓 十五の君へ~』のヒットに至るまで、長らく抱えていた自己肯定感の低さにカウンセリングで向き合ったことで生まれたといいます。

 カウンセリング、離婚、そして新しい恋を経て辿り着いた現在地について、率直に語ってくれました。(前後篇の後篇/前篇から読む

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葛藤、苦しみ、自己肯定感の低さが生んだ名曲

――2008年に『手紙 ~拝啓 十五の君へ~』が大ヒットします。アンジェラさんが30歳の時ですよね。

 ちょうど30歳になったときに、NHKから合唱コンクールの曲を作ってほしいというお話をいただいたんです。引き受けたものの、中学生が歌うことを意識しすぎてしまって説教くさい曲とか、嘘くさい曲ばかり出来てしまって。7曲くらい作ったんですが、どれも全然良くないんですよ。

 もうこれ無理かも、と諦めようとしたタイミングで母から誕生日祝いの手紙が届いたんです。「アメリカに引っ越したばかりの頃、あなたが30歳の自分に手紙を書いたことがあったじゃない? それを大事にとってあったから送るね」ってあって。そこに当時の自分が未来の自分に宛てた手紙も入ってたんです。

 ちぎったノートに、英語と日本語をごちゃまぜにした文章で、当時のクラスメイトにこんなことを言われて歯痒く思うとか、先生が私のことを理解してくれない、私は本当に一人なんだってことが書いてあって。

 最後には救いの言葉があるのかと期待して読んでいたのに、全くそんなことは書いてない(笑)。しかも、今となってはつらい思いをさせられたはずのクラスメイトや先生の顔を、全く思い出せない。

 でも、もう顔も思い出せないような人たちに生きる喜びを奪われていたんだと気づいたときに、その頃の自分がとにかく恋しくなって、抱きしめてあげたいと思ったんですよね。どうやったら当時の私にメッセージを届けられるだろうと考えながらピアノに向かったら、「拝啓 この手紙読んでいるあなたは どこで何をしているだろう」って歌詞がブワーッと出てきました。

――そこで、「これはいける!」と?

 いえ、最初は全然いいと思えなくて! 普段私が作るようなタイプの曲でもないし、リッチな展開もないから。でも、スタッフに聞いてもらったら「すごくいい!」って大興奮。もし一人だったらもっと短く編集してしまったと思うんですが、周りの人たちがそれを引き止めてくれたんです。

 だから『手紙 ~拝啓 十五の君へ~』が生まれたのは奇跡だな、と。小さな頃から抱えていた葛藤とか、自己肯定感の低さ、そして15歳の苦しみがこの曲につながっていったんでしょうね。

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