人生初のパニック発作を起こした

――集中型のカウンセリングプログラムにも参加したと聞いています。

 インテンシブトラウマセンター「オンサイト」の7日間のプログラムにも参加しました。携帯も持ち込まずに外の世界から遮断された場所で、5人ぐらいのグループセッションを受けるんです。自分も含めて参加したみなさんのトラウマを受け入れながら、一緒に治療していくという方法でした。

 初めて会う人たちにありのままの醜い自分をさらけ出すという体験をした後に、家に戻ったら人生初のパニック発作を起こしてしまったんです。息ができなくなり、現実というものがわからなくなってしまいました。これまでVRゴーグルをかぶってだましだまし生活をしていたのが、この7日間の体験でそのゴーグルを脱がされて、リアルなものを直視させられたような感覚でした。

――それまで目を背けていたものに、目を向けざるを得なくなった。

 そうです。そうなると、もう一度自分を騙すためにゴーグルを付けて生活をするわけにはいかないじゃないですか。そこからいろんなものが崩壊しはじめて、体も脳もそして心も追いつかなくなってしまいました。その結果、17年間一緒にいた人と離婚することに。どちらが悪いとかでは決してなくって、価値観とか見ていたものが全然違ったことに気づいたんだと思います。

 その最初のグループセッションに通ってから、喜びを感じているのかそれとも悲しんでいるのかわかるまでに2年かかりました。かじかんだ手をお湯に入れた瞬間に熱いのか痛いのかわからない感覚に似ていると思います。そこから3年、計5年かけて感覚を取り戻し、自分という存在を紐解いていきました。

闇は「克服するものではない」

――今回、日本での音楽活動を再開し、アルバム『SHADOW WORK』を発表されたのも、カウンセリングがきっかけだったのでしょうか。

 カウンセリングを3年くらい続けた頃に、初めて曲にしたいと思ったんです。今、ライフワークとして取り組んでいることを、アートとして表現みたらどうなるんだろうって。

 このアルバムには、被害者目線で書いている歌もあるんです。でもやられたと思っていることも、裏を返せば私も誰かに同じようなことをしてしまっているかもしれない。コインの裏表と一緒で、人間は生きている以上、二面性はつきものだから、そこは隠さないようにしてます。加害者の視点で歌った歌も、被害者も加害者もない、それは全部一緒なんだよって俯瞰でみた歌もある。そこはあえて統一してないんです。

 アルバムの中にある『Dance with Darkness』という曲の歌詞でも書いているんですが、闇の中にはいろんな自分がいるんですよ。ガイジンって言われて傷ついた少女もいれば、居場所が欲しくて学級委員になった少女も、ハワイに行ってどう生きればわからなくなってしまった子も、結婚相手に認められたくて無理してしまった人も全部自分。これまで目を背けていた自分の中の闇にいる住人たちを一人一人ちゃんと見つめて受け入れ、「統合」する。それが今回のアルバムのテーマになってます。

 闇って克服するものでもないし、光に辿り着かなくっていい。闇の住人とちゃんと向き合うことが大切。

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