「私が作りました」パッケージへの生産者の本音

 今年の米騒動から、お米の生産について人々の関心は高くなったものの、農家の現状は変わらない。野村さんには、生産者と物理的に距離ができてしまうことを、トークイベントや展示で埋めていきたい思いがあるという。

「食材を扱いながらも、生産している土地から自分がどんどん離れていっていると感じているんです。とはいえ、お米作りは誰にでもできることじゃない。だからこうして生産者の方のお話を直接聞いて、背景を知ることは大事なことだと思います。と思う。それからお米を自分の力で選んでほしいなって。お米を選ぼうとすると、川の汚れのこと、土のこと、その地域の自然災害のこと、海や森で起きていること......今起こっていることのほとんどがわかるんですよね。そういう情報が自然と入ってきて、世の中のことが網羅できます」(野村さん)

 今回集まったのは、山形、福島、新潟で在来種米「亀の尾」を育てている生産者たち。いっとき、生産者の顔が見えるようにと野菜などのパッケージに生産者の写真が載る販売戦略がウケたが、「あれが食べる人と作る人、という隔たりになっていた気もする」と、荒生勘四郎農場の荒生さんは言う。

「食べる人からは生産者が見えるけど、こちらからは誰が食べているか見えない。食べてくれる人の顔が見えると、農業も頑張れるなって思います。作りました、買いました、という関係ではなく、みんなで田んぼを共有できる農業のあり方を考えていきたいと思っています」(荒生さん)

 お米のおいしさも、食べる人が味を評価するというスタンスではなく、「今年はどんな風に作ったのかな」と想像できる余白を持ちたい、と野村さん。

「自然のなかで何かを育てるって毎年状況が違って、人がどうにもできないところも大きい。だから絶対に安定した味を求めなくていいと思っているんです。たとえば今年は水不足だったなら、ああ、水不足だったんだなあ、そういう味なんだなって思いながら食べればいい。安定じゃないところでの楽しみ方ってあるはずなんです」(野村さん)

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