
前篇では作品での役作りや映画『見はらし世代』の中で印象に残ったシーンや思い出などについて井川さんにお話を伺いました。後篇ではプライベートのお話にも迫り、女性としての生き方や決断の仕方など、CREA世代も迷ってしまう様々な問題に対してのお話しを伺いました。
》【前篇】井川遥「子育てを経験したからわかる“孤独感”がある」
子どもを授かったときから始まるのは“変化を受け入れる”こと

――この映画では“仕事に没頭する父親像”も同時に描かれています。井川さんも家庭と仕事のバランスに悩むことはありますか。
仕事と家庭の両立はずっと手探りで、本当に難しいと思いながら今に至っています。子どもの成長過程に合わせて生活の変化もありますし、急な体調不良やアクシデントなどの対応に、今でもあたふたしています。
――CREA世代はやはり結婚やキャリア、子育てなどに悩む年頃でもありますが、井川さんはそういった選択に迷いなどはありませんでしたか?
産後の大変さは想像できていなかったですし、現実を受け入れていくことしかなく、目の前のことに必死でした。成長が嬉しい半面、仕事が制限されるのは避けて通れませんね。それにやっぱり無理をすれば体への負担が掛かります。
出産は命懸けですし、すぐに授乳、睡眠不足になって回復する間がないので、どうしたって女性の負担は大きいですよね。1人目の子が順調でも2人目は……そして、その逆も然りで。仕事への関わり方も見通しが立たずに判断を求められるのは苦しいですよね。
私の仕事は不規則で泊まりがけの撮影などもあるので、子ども達がある程度大きくなるまでは、大きな連休に入れられる仕事だけと決めて、諦めなければならないこともありました。

――今回の作品を拝見して、女性が子育てを一気に引き受けることの弊害、といったようなものを感じましたが、井川さんご自身はいかがでしたか?
つらいことも多かったですが、私は子育てを自分が主体となりやってきたことで、得たものもとても大きいと思っています。“ともに育む”という、子育てを通して思いやりの精神を知りましたし、絆が生まれました。たくさんの友人にも支えてもらって今があります。子どもを取り巻く環境の中でそういった社会性が養われたことは大きいですね。
2025.10.04(土)
文=前田美保
撮影=佐藤亘
ヘア&メイク=松田麻由子
スタイリスト=青木千加子