子育ても16年目、随分タフになった

――時間が流れることで、変わっていくことはたくさんありますよね。
いつもあたふたしてきましたが、仕事の楽しさやありがたさをより感じるようになりました。子育ても16年目、随分タフになったなと思います(笑)。
今回出演している映画『見はらし世代』は、現代の東京の10年間の進化とともに、そのランドスケープが家族の在り方を見守っているという部分もあります。渋谷の街がさま変わりしていく様子は目を見張るものがありますが、失われていくことの寂しさもありますね。通学で使っていた渋谷が今は娘に案内してもらわないと、どこの出口に出ていいかわからないです(笑)。
宮下公園の前での撮影は、使うはずの歩道橋に幕がかかってしまったり、いきなり工事のフェンスが出来てしまったり……。前日まで平気だったのに一晩で、翌朝まったく使えないことが判明するなど、そういったことが結構ありました。
――最後に、この作品を通して、観客の方に届けたいメッセージをいただけますか。
東京・渋谷の10年間の変遷が映画の真ん中に据えられていて、そこで起きている日常や時間、人の想いなどを切り取っている作品です。
子どもの視点、仕事中心の父親の視点、家族を思う母の視点がそれぞれ描かれていて、団塚監督の瑞々しくて鋭い、成熟した視点が詰まっています。観てくださった方が、過ごしてきた10年やご自身のご家族のことなどをふと思い返していただけたら嬉しいですね。
》【前篇】井川遥「子育てを経験したからわかる“孤独感”がある」
井川 遥(Igawa Haruka)
2000年に女優デビュー後、映画、舞台、ドラマ、モデルなど様々なジャンルで活躍。近年は母親や大人の女性、複雑な内面を持つ役柄など幅広い演技で注目され、映画『さかなのこ』では、魚への情熱を貫く主人公の母を演じ、子どもの個性を見守り支える母親を好演。ドラマ『下剋上球児』では、甲子園を目指す高校野球部を取り巻く人々のドラマの中で“姉さん女房”としての強さと温かさを見せた。今秋公開の映画『アフターザクエイク』では主人公善也の母として重要な母性を体現。映画「平場の月」では堺雅人と共演し、35年ぶりに再会する初恋相手を演じる。演技の幅と存在感を増し、さらなる活躍が期待されている。
映画『見はらし世代』
2025年10月10日公開
黒崎煌代、遠藤憲一、木竜麻生、菊池亜希子、中山慎悟、吉岡睦雄、蘇鈺淳、服部樹咲、荒生凛太郎、石田莉子、中村蒼/井川遥
監督・脚本:団塚唯我
配給:シグロ
配給協力:インターフィルム、レプロエンタテインメント
https://miharashisedai.com/

2025.10.04(土)
文=前田美保
撮影=佐藤亘
ヘア&メイク=松田麻由子
スタイリスト=青木千加子