この宿の“ならでは” その2
「伝統に培われたクラフトの町、松本の魅力を知る」

クラフトルームでもの作りの町、松本のクラフトに触れる。

 松本は、クラフトの町として知られる。

 もともと和家具の産地だった松本だが、民藝運動家の柳宗悦に師事した池田三四郎が始めた松本民芸家具が全国的に有名になったという下地があって、焼きもの、機織り、ガラス細工などクラフト作家も集まり、町ぐるみのイベントも行われるようになった。

 なかでも有名なのが、毎年5月最終の土日にあがたの森公園で開催される“クラフトフェアまつもと”と、秋に開催されるワークショップ・イベント“クラフトピクニック”など。今年で30周年を迎えたクラフトフェアまつもとは、出展299組、来場約4万8千人という盛況ぶりだった。

江戸時代から続く美しい「松本手まり」と復活した伝統工芸「みすず細工」。

 各地の「界」には、ご当地部屋という、その土地の魅力を伝えるしつらえを施した部屋がある。

「界 松本」のご当地部屋のテーマは「クラフトルーム」。クラフトフェアでも主導的な立場で活躍するKancraftの羽柴親子による家具が縁側に置かれ、「みすず細工」という繊細な工芸作品が部屋を飾る。

Kancraftの羽柴親子。クラフト作家達が繋がって、もの作りは文化になった。

 Kancraftの椅子は、腰掛けると座面のフィット感が実に心地よく、微妙な斜め具合で自然に背もたれに身を預けることができる。また、みすず細工は、最後の職人が亡くなって潰えた技術を、2011年から松本の有志が集まって復活させたものだという。

みすず細工は、細工の元になる竹を割くのが難しく、作るのにも手間がかかる。

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2014.06.29(日)
文=小野アムスデン道子
撮影=深野未季