「星野リゾート 界 熱海」(前篇)
伝統ある日本旅館、雰囲気に憧れるけど、ちょっとハードルが高いと思ってませんか?
日本古来のしつらえとおもてなし、ご当地の食材や文化、そして日本の誇る温泉。日本旅館の魅力とその味わいを気後れなく楽しむための心得が「旅館道」。
“和心地“な温泉旅館をコンセプトとする星野リゾートの「界」と、“現代を休む日”をコンセプトにした和のリゾート「星のや」を巡りながら、「旅館道」を追求するシリーズの1軒目は、東京からのアクセスも便利な「星野リゾート 界 熱海」。この宿で「芸妓さんと遊ぶ旅館道」です。
旅館道その1
「老舗でも派手にあらず、自然を愛でるしつらえを学ぶ」
東京から新幹線で熱海駅までは約45分、駅弁を食べる間もなく到着した熱海は古くからの温泉地だ。駅からタクシーに乗ること約5分で到着した「界 熱海」。
熱海の伊豆山にあって、開湯1300年という日本三大古泉の源泉を持ち、元は江戸末期の嘉永2年(1849年)に創業した「蓬莱」という歴史ある老舗旅館だったところ。そう聞くと、格の高い近寄り難さを覚えるかもしれないが、畳敷きの玄関の間に飾られた生け花や大きな屏風はそれらしいものの、細い廊下、すっきりしたお部屋の入り口といい、意外に簡素で素朴な美を感じさせる宿だ。
客室に向かう階段の踊り場には、飾り箪笥の上に楚々とした花が奥床しく生けられている。紫がかった白い花弁が可憐な花は、ちょっと見たことがない。名前をきけば、「シャガといって、中庭にも咲いているんですよ」という答え。いつも敷地の中に咲いている季節の野の花が生けられるそう。ロビーのテーブルにあったテッセンもそうだが、器と花の風情が合って、とても美しい。
右:一階上の生け花は「立てばシャクヤク……」と美人の姿に例えられる花が華やかな風情で。
5月の今日は、「温泉の湯にもショウブとヨモギを浮かべます」と聞き、派手なお出迎えはないが、旅館のそこここにある自然を取り入れたおもてなしに品のよさを感じる。花や器、掛け軸、置物、それぞれに季節の意味もあって、名前や来歴などを尋ねての会話で和めるのも、伝統旅館ならでは。
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2014.05.24(土)
文=小野アムスデン道子
撮影=深野未季