世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。

 第38回は、芹澤和美さんがミャンマーで見た急成長都市の素顔について。

ヤンゴンで一番心地いい場所、黄金の仏塔

 アジア最後のフロンティアと言われるミャンマー。民主化されて以降は外国からの投資も活発になり、都市部の開発が著しく進んでいる。でも、旅好きがこの国に惹かれる一番の理由は、ビルマ族を含め135の民族が暮らし、国境を接する国々に影響を受けた独特の風土だろう。

 「開発が進みすぎる前に見ておかなくちゃ!」と、私も旅を計画。観光ビザを取るまでが一苦労だったが(会社員なら在籍証明書が必要、専業主婦なら非課税証明書が必要、私はフリーランスのライターという職業柄、「政治活動はしません」「取材活動はしません」と英文で記した誓約書が必要)、準備を整え、無事に念願のヤンゴンへ。

夜のシュエダゴン・パゴダ。パゴダというのは仏塔のこと。このパゴダには、6000個もの宝石が埋め込まれているという。

 ミャンマー最大の都市、ヤンゴンでもっとも賑やかな場所といえば、「シュエダゴン・パゴダ」。境内は高さ約100メートルにおよぶ黄金のパゴダ(仏塔)を中心に、大小66のパゴダや仏像、小さな廟が並ぶ広い空間になっている。寺院でありながら、まるでテーマパークのような規模だ。入口で拝観料を支払い、靴を脱いで(パゴダでは裸足がルール)、エレベーターで階上に上り、境内に入った。

夜のシュエダゴン・パゴダは幻想的でいっそう美しくなる。

 ヤンゴンの日差しはとても強烈。日没後は、黄金色に光る巨大パゴダに吸い寄せられるように老若男女が集まり、ここで思い思いに過ごす。もちろん、熱心に参拝している人が多いのだが、かたわらでは、夕食のお弁当を広げる家族や、デートをするカップル、大理石が敷かれた地面に座ってお喋りに興じる女性グループなどもいて、賑やかだけれど、どこかのんびりとした雰囲気。

巨大ストゥーパの周りを散策したり、地元の人にならい、ひんやりとした大理石に座って仏塔を見上げたり。あっという間に2時間が過ぎてしまった。

 中央にある巨大ストゥーパを取り囲むようにして点々と並ぶのは、ミャンマーの伝統暦「八曜日」の神様を祭る像。ミャンマーの人々にとって、自分が何曜日に生まれたかは、とても重要なことで、「月曜生まれは虎・東、火曜生まれはライオン・南東」といったように、各曜日に方角と守護動物があるという。水曜だけ午前と午後に区別されるので、全部で8つの曜日があるというわけだ。水曜生まれの私は慌てて母に国際電話をし、生まれた時刻を確認、守り神にお参りをすることができた。

左:廟で話し込む十代の男の子。夜遊びとはいえ健全。
右:境内にはフリーWifiあり。休憩中のお坊様も、スマホに熱中。

2014.06.17(火)
文・撮影=芹澤和美