美しくしなやかな朝のヤンゴンを散策
翌朝は、日差しが強くなる前に街中へ。まだ朝9時台というのに、さとうきびジュースのスタンドに麺屋、南国フルーツ屋、調味料専門店に雑貨店にミシン一台で営む修理店などたくさんの露店が並び、賑わっていた。はっとさせられるのは、人々の装いと上品な身のこなし。老いも若きも、男性も女性も、みな、民族衣装のロンジー(腰布)を纏っているのだ。ほっそりとした女性が日傘を差してしなやかに歩く姿などは、うっとりとしてしまうほどに美しい。
屋根つきの市場、「ボージョー・アウンサン・マーケット」はヤンゴン最大のマーケット。イギリス植民地時代からあるクラシカルな建物をそのまま利用したマーケットの中には、生地店や仕立て屋、宝石店に漆器などの店がひしめいている。観光地としても知られている場所なので外国人だらけと思いきや、ローカルの姿も多い。私もロンジーの生地を購入、その場で仕立ててもらった。
右:漆器細工店では長居してあれこれ見させてもらったが、店員は嫌な押し売りするでもなく、丁寧に説明してくれた。
涼しく快適なロンジーに着替えて向かったのは、「チャウッターヂー・パゴダ」と「スーレー・パゴダ」。とにかく、ヤンゴンにはパゴダがたくさんあるのだ。チャウッターヂー・パゴダは、高さ17.6メートル、長さ65.8メートルの寝釈迦で有名。巨大なお釈迦様の足裏に描かれた108個の仏教宇宙観図に圧倒される。ここも、人々の信仰の場であり、メジャーな観光スポット。
右:スーレー・パゴダのすぐ近くには、近代的な高層ビルが。
市場でもパゴダでも、国民性なのか、人々はとてもマナーがよく、穏やかで優しかった。たいていのタクシードライバーは英語が苦手だが、誠実に対応してくれた。市内を走るヤンゴン環状線に乗ったときのこと。隣に座っていたご婦人たちが、「そこは暑いだろうから、こっちへいらっしゃい」と席をぎゅうぎゅうに詰めて私を日陰へ座らせてくれたのは、じんわりと温かな思い出だ。
2014.06.17(火)
文・撮影=芹澤和美