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不安になりやすい日本人の「脳」

 特に不安傾向の高い人はそうなりやすいので、日本人は要注意です。

 脳内にはセロトニンという神経伝達物質があり、これが十分にあると感情や気分が安定します。セロトニンの動態を調整しているのがセロトニントランスポーターというタンパク質で、神経線維の末端から分泌されたセロトニンを再度、細胞内に取り込みます。

 この数が多いほどセロトニンの使い回しができるので気分が安定し、少なければ不安を感じやすくなりますが、日本人の97%がこの数が少ない。お悩みへの回答で述べたとおり、日本人は不安になりやすい民族なのです。

 私自身も不安傾向は高い方だと思います。仕事などで一時、良い結果を出しても「この先はもう落ちていくだけかもしれない」と思うタイプです。

あなたの存在に価値があるのは間違いない

 もし、死にたい、という気持ちがよぎることがあったら、今の自分の評価の基準が偏っていないか、気にしてみてほしいのです。

 偏った基準で自分を査定して、ああ自分はダメな人間だ、生きている価値がないなどと決めつけないでほしい。あなたの苦しさには必ず意味があり、あなた自身の存在に価値があるのは間違いないのです。

2025.08.08(金)
文=中野信子
写真=平松市聖