知り合いのお父さんの遺骨を預かった話

――ところで、そのシンクに置いてある小さい骨壺みたいなものは?
知り合いのお父さんの遺骨です。
――前作『恐い怪談』に収録されていた「遺骨の旅」の! 確かご両親が離婚し、離れて住んでいたお父さんが孤独死して、その遺品整理をなぜかタニシさんが手伝ったという!?
それです。遺品整理のために部屋に入ると、万年床の周りをエッチな本が取り囲んでいたのが印象的です。せっかくなので遺品整理のあと一泊させてもらい、僕もその布団で寝てみたりしました。
――その布団って……。
部屋には娘さんの写真もいっぱいあったんですよ。お父さんはお酒が好きだったというので、僕もお酒を飲みながら「娘さんを大事に思ってたんですね」とか「でも娘さんにこんなエッチな本を見られて、恥ずかしかったりします?」とか話しかけていたら、台所からカーン! って音がして、あぁ、まだここにいるのかなと思ったり。

長い間一人で、東京を出ることもほとんどなかったであろうお父さんを「しばらくの間、どこかへ連れて行ってもらえませんか」と頼まれたので、全収骨の遺骨を預かり、その大きな骨壺と一緒にいろいろなところへ行きました。
僕の実家、名古屋のラジオ局、飛行機に乗って恐山へも。骨壺は一旦お返ししたのですが、今はまた、お父さんの骨壺のミニサイズ版を預かっているので、とりあえず新居を見せてあげようと思って。
――優しさと狂気って両立するんですね。あともうひとつ、蝶の標本がありますが、これは?
こちらも『恐い怪談』に書いたのですが、この標本を持っていると、蝶の夢を見るようになり、見るたびに人生を揺るがす出来事が起こり、3回目の夢を見た後、標本を手放さないと死んでしまうといわれています。
僕の前の持ち主は怪談図書館・桜井館長(心霊写真研究家)、その前は夜馬裕さん(怪談師・作家)で、どちらも3回蝶の夢を見てその都度不幸に見舞われ、身の危険を感じて手放したという曰く付きの品です。

――それでタニシさんは……。
夢は一度も見ていません。ただ。和歌山の那智の大滝に身投げしたという、修験道の行者のお墓を訪ねたとき、墓石の後ろからのこの黒い蝶が3匹出てきたんですよ。もしあれが白昼夢だったらあと1回で死んでしまうのかな? と思って夜馬裕さんに話したところ、「夢を3回見ることが条件だから、何匹出てこようとまだ1回ですね」と言われました。
――ひとまず安心しました。新居のルームツアー、堪能させていただきました。ありがとうございます。来年もまた、お話を聞かせてください。

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事故物件 恐いタニシ展
◆大阪公演「事故物件 ニシ 恐いタニシ展」
日時:2025年7月21日(月・祝)
会場:大阪・朝日生命ホール
料金: 前売5,000円~、配信3,000円
チケット:チケットぴあ(Pコード:656-688)で発売
◆東京公演「事故物件 ヒガシ 恐いタニシ展」
日時:2025年8月10日(日)
会場:東京・雷5656会館ときわホール
料金:前売5,000円~、配信3,000円
チケット:チケットぴあ(Pコード:656-689)で発売

2025.07.18(金)
文=伊藤由起
写真=志水 隆